「あ、ギルさん」

「…春子か。丁度良い、付き合え」

「え!?あ、あのあたし既に心に決めたウェイバーさんという人が…!」

「愚か者。一人で酒を飲めと申すか」

「あー…うーん、うん。ギルさんなら顔が整ってるし、女の人ならもっと美人なのを誘えるのでは」

「そこいらの雑種と戯れろと?貴様は黙って我に付き従うが良い、行くぞ」

「え、ちょっ!」


ぐいぐいと強引に引っ張るギルガメッシュに慌てて歩幅をあわせる春子。
折角ウェイバーさんにお使いを頼まれたのに、なんでこんなタイミングで現れますかこのイケメン王め!美形は恨めねーんですよ!!


「…心配されちゃうなー」

「何だ、何か言ったか」

「いいいえなんでもありません!」


なんだかんだ言って優しいからウェイバーさんにどんどん嵌っちゃうんだ、単純だなあたし。
取り敢えず今は他のことは考えないようにしよう。ギルさんの機嫌はそこねたら厄介そうだ。春子ちゃんの脳からウェイバーさんを抜いたらもう1割しか残らないよ!


「おい春子」

「は、はいなんでしょう!」

「……貴様に他意は無いのか?」

「タイ?魚なんてありませんよ普通!鞄が生臭くなりますってば!」

「ふ、ふはははっ!そこらの道化よりも我を興じさせるな、春子」

「ありがとうございます?」


ドウケってなんだ。とはいえない。

ギルさんと夜の繁華街を進むと、やっぱりギルさんの容姿は浮き立って見える。
周りの女の人から来る憧れとあたしへの嫉妬の目線がこわい。ギルさんは気にもしてないどころか何処か得意げだしどうなってるの、チキンいじめですかこれは。



「(公開処刑だ…)」

「何を気色の悪い顔をしている。我の前に不快な面を晒すでない痴れ者が」

「す、すみませんね」

「フン。詫びるならば初めから面目の無い面を見せるな」



ギルさんはそう言ってあたしの手首を掴むと人込みを避けてぐんぐん歩いていった。

…やばい、これはウェイバーさんに出会ってなければ危うかったかもしれない。
ウェイバーさんの絶対的運命を持ってしてもこの人は危険すぎる、あたしのイケメン耐性低いからやばい!
だけどウェイバーさんのツンデレよりも脅威になるものなんてないけどね!この人にあたしを出血死させることはできないからね!はっはっは。



…早く帰らなきゃ。


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