冬の南円と


南雲は噛むことしか知らないらしい。ので、そのままにしておくのだと円堂は笑った。大きなガーゼがあててある首筋を覆ったマフラーがしらじらとたなびく。冬の、乾いた肌をあのぶしつけな男がひどく噛んだのだという。腹立たしかったので、罪のないフリンジをむしるように引っ張ってやった。
引っ張られながらも、やはり円堂は笑っていた。頑是ない恋しかしらないほうけた男を待ちながら、私たちは少しばかりじゃれあって仲良くした。

「涼野、ないしょだぞ」

南雲は俺に悪いことしてると思ってるから、今のは全部ないしょだ。悪びれずに、そのくせあざやかに笑う。私はくらりとした。


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