ループ系男子なぐも



潮風をはらんだ風が頬を撫でる。わずかにべたついたそこに、舞い上がった砂埃がコーティングされた。風が止む。わあわあと潮鳴りに似た声がいくつもいくつも南雲の耳に届いた。思わず目を見開く。そうか、今回はここからなんだな。砂浜に沈む靴の先、汚れていくジャージの裾。ボールを持つ手にはグローブ。いつも通りのオレンジのバンダナ。円堂守がそこにいた。正確には、円堂守とその仲間たちだが。

さて、困ったことに南雲は沖縄から出られなくなってしまった。この件には本人さえ未だに仕組みがはっきりしていないある現象が絡んでいる。それは、彼が円堂守にかかわり、<とある結末>を迎えようとすると、強制的に時間が巻き戻ってしまうという、なんとも不思議な、そしてどこか恣意的な現象であった。短いスパンでのループを何十何百と繰り返しているうちに、いくつかの発見をした。一つ目、円堂守と関わるという選択をしないうちに彼らが沖縄を出たら、自分は自然とスタート地点―最初にこの島に降り立った地点であり、時刻である―に巻き戻されるということ。二つ目、巻き戻された自分は<とある結末>の一歩手前にいたり、未だ何のアクションも起こしていない地点であったりと、ばらばらであること。しかし一つ目の発見の場合をのぞいて。三つ目、どうあっても自分が円堂守に悲しそうな顔をさせてしまうこと。

砂浜に立ちつくす南雲の姿をみとめた雷門中ご一行がしんと静まり返る。南雲は、頬に付いた砂を乱暴にぬぐい、円堂の元へと歩を進めた。よお、お前ら、炎のストライカー探しに来たんだって? 南雲の頭の中で、かちりと音がした。秒針がすすんだ、恐らく最も幸せな結末を目指して、南雲は今回も、円堂守の前でシュートを披露する。

(もしひとつ感謝することがあるならば、お前の笑顔と眼差しをを何千何万浴びられること)





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