幸せについて円堂さんが本気だして考えたようなそうでもないような



父が言っていた。少し前までは土曜日にも半日だけ学校があって、土手沿いの道を、昼ごはんはなんだろう、とか、今日はなんだか空気が柔らかいな、とか、隣の隣りの二つ前の席に座っているあつこちゃんの髪型がいつもと違ったな、とか、そういう色々を考えながらのんびりと歩いていたと。金曜日の夜遅く。母はとうに眠っていて、俺は眠れなくて、父は居間でコーヒーをお供に本を読んでいた。守は、明日は何をするんだい? と聞かれ、こちらが答えるより先に、サッカー? と言われた。残念、ちょっと違う。違うから眠れなかった、いやでも、なんかそういうのは、恥ずかしい。サッカーじゃなくて、…出かける。誰と? ないしょ。眠れないくらいには楽しみ。
土曜日午前5時半。うすら青いもやがうるうるしている。温まる体に巻きつく冷気が心地良い。午前6時半。家に戻る。ランニング中、かなり大きな白い細長ーい犬になかば引きずられるように散歩しているおじいさんに出会った。それが一体なんという犬種であったのか、父と母と共に推察しながら、朝食を食べた。
白くて細長くて、毛だらけだった。毛も細長い感じだった。顔も。なんか、全体的に細長かった。すごく大きくて。砂木沼に説明する。各駅停車どこそこゆき、の電車がホームに到着した。いつも以上に気難しげな表情だ。でも、レールに跳ね返る陽光が彼にとって眩しすぎるだけなのだと俺は知っている。空いている席に並んで腰かけた。ボルゾイではなかろうか。そう言ったきり砂木沼は目をつむって動かなくなってしまった。今日一日心おきなく出かけられるようにと、週末に出された課題を昨夜だけで終わらせたために、少し眠いのだということを俺は知っている。なぜならば、三か月前の土曜日にも同じことがあったからだ。開け放された窓から吹き込む風がなだらかに満ちる。午前中と二人を乗せて、電車は進む。

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