副題:三月九日とかでいいんでない
(前サイトのやつをリサイクル)




どうしてそれをお前が知っていて、そしてよりによって俺に相談してくるのか。口に出せば著しく体力を消耗することは明らかだったので、鬼道は眉間を押さえながらため息をつくだけにとどまった。
恋人が自分の誕生日に向けて、贈り物を探してくれているらしいが、それについて何か知らないか。長々と惚気を交えて繰り広げられた話を要約すると、佐久間はこくりと頷いた。確かに、佐久間の恋人である円堂からプレゼントの相談は受けた。二人の関係については非常に不本意ではあるが、事実は事実だ、認めよう。しかし大したアドバイスはしなかったように思う。どうせ何を贈っても喜ぶのだろう、というわずかばかりの苛立たしさと、いまだに引きずったままの恋が鬼道の口を重くした。佐久間はペンギンが好きだ、という分かり切ったことしか言えなかった。それでも円堂は、鬼道が焦がれ続けている笑顔で礼を言った。思い出して少し心苦しくなる。

「雷門の連中はもとより、源田や辺見、成神、咲山…挙句の果てにバナ、いやなんでもない不動にまで聞いたようだ」
「なぜそこまで知っているんだお前は。筒抜けか。」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ。源田がにやにやしててイラついたから締め上げて聞き出しただけだ。ちっ…少し声かけられただけで…まあ、そうしたら芋づる式に」
「ああ…だからあいつはバナナの皮を頭に乗せて倒れてたのか…ところで、それを知ってお前はどうするんだ。何か特定のものをくれるように差し向けたいのか?」
「なにもしない」
「なに?」
「なにもしないさ、鬼道。知って、喜んだり楽しんだり、それだけだ」

鬼道は何も言わずに踵を返した。翻るマントをすかさず佐久間はつかむ。ほんの少し前まではそのようなことはされなかった。というよりもむしろ過度に敬われていたような。いったい何が彼を変えたのか。恋か。腹立たしい。

「円堂は」

いっしょうけんめいだ、と消え入るような声に、鬼道はマントの乱れをただす手を止めた。だから安心する。だから、愛されているとわかる。わかりやすい。

「円堂は好きでもないやつと付き合ったりはしない。そんなことも分からないのか。参謀が聞いて呆れる」
「分かっているさ。円堂は俺を選んでくれた。でも困ったことに、鬼道、」

俺は毎日、円堂が足りなくなる。
うつむいた瞳に重くゆらめく色を、鬼道は見ないことにした。



「…で、どうなったんだ」
「ペンギンの写真集を貰った」
「お前、国内外の物はあらかた買いあさっていなかったか」
「ああ。貰ったものも既に持っていた」
「どうしたんだ」
「保存用と実用」
「何に使う気だとか俺は聞かんからな」



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