吹雪と冬樹(♂冬花)


「僕、君のこと大好きだな」
意図を読ませない笑顔を頬に乗せた吹雪を、冬樹は一言、気持ち悪い。と切り捨てた。
「君、すごく嫌な感じ。あとから出てきていいポジション取るし、見えないところに問題抱えてキャプテンに気にされてるし、顔もいいし、僕そっくり。でも困ったことに僕は自分が好きなんだよ。だから僕とすごく似てる君のこと大好き。あは、腹立つ」
冬樹は細い眉をついと寄せた。こんなくだらないことを言うために引き止められたのだから、この腕に抱えた洗濯かごの中身をこの男の頭にぶちまけるくらいのことは許されるはずだ。視線を落とすと深い緑色の長袖が見えた。思わず口元がほころぶ。
(マモルくんのはそんな風にしないよ、もちろん)
「僕と君は似ていない」
「そう?」
「僕はたくさんいるFWの中の一人じゃない。マモルくんのたった一人だから」
「なにそれ。自分がそう思ってるだけじゃないの。キャプテンのこと忘れてたくせに」
「虫が良すぎる? 別に何言われたって構わない」
「やっぱり似てるよ。僕も、周りなんてどうでもいいから」
吹雪に背を向ける。洗濯物を運ばなくては。キャプテンさえ僕を見ていてくれるならそれでいいんだ。背中にかけられた声は菫色の髪をすべって落ちた。深緑が腕の中で踊る。彼にまつわる誰かの言葉さえ、意に介す必要性を感じない。存在だけでじゅうぶんだ。




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