一期の春馬くん(♂音無)と



小さな頃から、写真はたましいを閉じ込めるなんて古い迷信を一心不乱にオレは信じていた。両親の写真には両親のたましい、兄の写真には兄のたましい、そのほかもろもろ。だってこうすれば失いたくないものはどこにも行かないからだ。中学に上がって新聞部に入ったのも、カメラを人に向ける口実が欲しかったから。被写体となった誰かが将来大切な人になったときのために。
「音無」
この声を、向けられる目を、あなたの思いを、あなたへの思いを、俺は写真に撮る。映す。閉じ込める。綴る。
「音無、…まだ?」
「もうちょっと我慢してくださいね、なんかうまくいかなくて」
「そうか、」
「すみません」
「いや、大丈夫だからさ、がんばれよ!」
兄は俺に連絡を寄越してくれない。俺からの連絡も流される。それは写真が少なかったからだ。たましいが足りなかったからだ。そして、兄のたましいを目の前の人が持っていってしまったからだ。あの練習試合の日に。だから俺はこの人を徹底的に映す。それはこの人に内包された兄のたましいをも撮り戻すことに繋がるから。
「なんか顔がぴりぴりしてきた…」
「キャプテン、ほら、笑って笑って! がんばって!」
でも、俺のシャッターよりあなたの瞬きの方が遥かに多い。そのたび撮られているんだ。いつか俺たちが互いを全て閉じ込めあう日が来るのだろうか。




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