別に嫌だったわけではないようですが



ばしゃりと赤い液体をぶちまけたように染まる丸い頬は、それだけで喉を鳴らすには十分だった、本当だ。誓ってそれだけだ。困らせるつもりはなかったと南雲は心の中で言い訳をする。数日前のことだった。夕暮れの土手沿いをのんびり歩いていた円堂が、いつもみたいな開けっ広げな笑顔とは少し違う顔で俺に向かって笑うものだから。赤に染まって笑うものだから。メールが返ってこない。へそを曲げて、でもやはり俺のことを考えているのだろうと思い、南雲はようやく円堂の家を訪ねる決意をかためた。お前な、お前アレだよ、道端でほっぺチューなるものをしたのは謝る…いや、実際悪いとは思ってねえけどお前が望むならちゃんと謝るからよ、だからいい加減機嫌治せよ。面と向かったら言えるだろうか…夕暮れを選んで歩きだした時点で駄目かもしれないな、と思いつつも南雲は円堂の家のドアチャイムを鳴らした。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -