南雲さんややてんぱってないですか


なんか洞察力冴えわたってたぽくて、夢だと一瞬で気づいた。だからこそ指をさして笑うこともできた。お前、ちょ、何泣いてんの? 泣いているから気づくことができた。俺が想像する通り、というか夢想していたどおりの泣き顔だったからだ。こいつこういう風に泣いてくんねえかな。とか。なんか、そういうの、わりと考えてたわけで。とりあえず俺はちょっと言い知れない喜びみたいなのを感じてたので、びゃーびゃー泣きまくる円堂を指さして笑った。すっげえ笑った。三カ月分くらい笑って、で、ようやくその目元が尋常じゃないくらい真っ赤で、それに気づいてからどうして円堂が泣いているのかを聞く気になった。

南雲、どうしよう、俺、どこにも行けなくなっちゃった

要領を得ない。いや、待て。今までこいつの話で要領を得たものがあったか? なかったような気がする。だからこれは通常運転だ。いつも通り、唐突で意味が分からない。理解をする努力はあえてしないでおいた。どこにも行けなくなった、サッカーもできなくなった、誰もいなくなった。かなりぶさいくな面で泣いている。涙はぬぐってもぬぐってもぼたぼた垂れてくるから、いつのまにかそれはゼリーのように俺の足元を固めていた。円堂は既に膝まで涙に浸かっていた。これちょっとやばくね。窒息的なそういうアレなんじゃねえの。おい、泣き止めよ、ごぷりと喉奥をとろける熱さが刺激した。水かさ? 水かさ…? よく分からないが、とにかく、息をするたびに円堂の涙が口から入って体じゅうを透きとおったものに変えていく。円堂の涙はこぼれるたびに固まって、俺の目玉にじいっと染み込んで、額をゆっくり曇らせた。南雲、おれがおれでなくなっちゃう。ああもううっせーよお前、いいよそういうのは。別にそんなの関係ねえだろ。どこにも行けないとかサッカーできないとか。じゃあどこにも行かせねえしサッカー取り上げんぞ、逆に。逆か? ちがくね? まあいいや。お前が例えサッカーしていなくたって、そのせいで手のひらがふわふわしっとりバウムクーヘン的感触になったって、お前が俺にいかがわしいことされてるって事実とこれからもされるっていう未来に変わりなんかねえんだよ、ばか。




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