聞くところによれば、付き合うというのは一緒においしいものを食べたりのんびりごろごろしたり共通の趣味を見つけてみたり当人たち以外どうでもいいようなことで口喧嘩をしたり「って母ちゃんが言ってたんだ」
「……私にどうしろと」
「サッカーじゃん、ご飯うまいじゃん、ごろごろもしてるじゃん、今。な?」
「ああ」
指を折りつつ数えあげる円堂に、砂木沼も逐一頷く。否定すべき点は特に見当たらない。向かい合わせに座ったまま、円堂はくりくりとまるい目で砂木沼の顔を覗きこんだ。
「でな、あと残ったのが喧嘩なんだ。重要なことじゃだめだぞ、どうでもいいことで喧嘩しなくちゃ」
「それは難しいな」
「やろうぜ! 砂木沼!」
「気乗りせんな」
「治先生の協力をあおぎたい!」
「それならば仕方がない」
よしいくぞ、と意気込んだ後、円堂は砂木沼をじいっと見つめた。上から下まで見られて、わずかばかり居心地が悪い。砂木沼も負けじと円堂を眺めまわした。
「えーとな…顔が恐い」
「嫌か」
「嫌なわけないだろ!」
「寝癖がついてるぞ」
「どこ?」
「ここだ」
「ありがとー…あっポジションよく変わる」
「次はDFにも挑戦してみるか」
「ゴール前に砂木沼とか変な安心感」
だらだらと雑談を続ける。途中から、円堂は口喧嘩をするという件を忘れているのでは、と思ったが、黙っておいた。そもそも膝上に抱いて向き合っている相手とはどう足掻いても喧嘩するような雰囲気になれない。砂木沼はくるくると自分の髪を弄びはじめた円堂の頬を軽く引っ張った。




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