自覚してしまった不動さん


淀みないリフティングがあいつのたった一言のせいでずれやがったとき、俺は心を決めた。円堂守を諦めなければならない。
誰かに影響を与えることも、与えられることもなく生きて行くのが一番簡単だ。チームワークとかそういううざったい色々だって、サッカーをしている自分は普段のそれと違うのだと割り切ってしまえば問題なかった。こんなことを円堂に言おうものなら…何と言うだろうか、もしかしたら俺の在り方を認めてくれるかもしれない。だが、余計な期待はしないでおいた。なんといっても俺は、今後あいつから与えられるかもしれない一切合財を諦める人間だからだ。

「話ってなんだ?」
俺はあんたを諦める。でも、その結論に至る経緯を伝えてもいないのだ、いきなりわけのわからないことを言われた円堂は目を丸くしていた。
「諦めちゃだめだ」
馬鹿みたいに丸くした目のまま、円堂は絞り出すようにうなった。普段より低い声が俺の意識の表面を荒く撫でる。
「今はつらいかもしれないけど、絶対、なんとかなる」
「だから諦めるなってか?」
言うのは簡単だろうよ。円堂は泣いていた。泣くのも簡単だろう。え、つうかお前なんで泣いてんの。
「不動がいなくなるなんて嫌だ」
あっやべえこれ明らかに伝わってねえわ。
「…代表やめるわけじゃねえし」
「えっ」
「俺が諦めるのは、あんただっつってんだろ」
「え?」
「馬鹿みてえに倍率高いあんたを、好きだけど諦めるんですよ俺は」
茶化して言った。後のことは考えていなかった。色恋沙汰なんてどうせわからないだろう。なにせ、豪炎寺や鬼道クン、その他国内外の変態どものアプローチが全くと言って伝わっていないのだから。円堂は数秒の後に言った。じゃあなおさら諦めるな。あまりのことに思わず二度見する。二度映ったのは、目をきつく瞑って真っ赤な耳をした円堂だった。

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