相変わらず噛みたい南雲(『そのくせ』の続きっぽいです)


好きでやっているわけではない、とは言い切れない。あの瞬間に円堂がどのような表情をしているかなんて、のまれる息の鋭さからしか想像できないし、もしそんなんが想像できてんなら俺はとっくにこんな癖とはおさらばして普通にこいつを好きでいられるんだよちくしょうが。そういうわけで、いや、どういう? とにかく俺は同じことを繰り返さずにはいられない。好きだから大切にしたいから守りたいから付き合っているわけで、痛みを植え付けたくも暴力で手なずけたくも理不尽を知らしめたくもない。だが、そういう殊勝な心がけ全部食らいつくして俺の本心が思い切り背中を蹴飛ばしてくる。噛めばいいだろ、いつもみたく。こいつはいつも何も言わないんだから。つまりお前、つまり俺、つまり俺ら、怒られてるわけじゃねえよ。やってよし。そして今も、やらしい程度に柔らかい耳たぶを犬歯でうがつように噛んでいる。くそ、ああ、気持ちいい、死にたい。指を絡めることも、口づけも、ましてやその先なんかしたことはない。どんなに試みようと俺は円堂の確かな固さや柔らかさに引き寄せられてしまう。体中をくまなく噛みたい、咀嚼すらしたいかもしれない。でも、それがもし許されたら俺たちの間のなんかよくわかんねえふわふわしたものが消えてしまいそうな気がして言わずにいる。噛みたい気持ちに唯一勝るそのわけのわからなさのために、俺はこいつといるのだから。




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