綱海さん何考えてるかちょっとわかんないです すたすたと骨っぽい手がトランプを切るのを、やけに冴えた目で円堂は見ていた。とっくに消灯された合宿所からは、耳をすませばいくつもの寝息が聞こえてきそうだ。綱海が、かたり、とトランプの角を揃え、円堂と彼の前に交互に配っていく。あぐらをかく彼の膝の上には赤い帽子をかぶったジョーカーがきゃたきゃた口を歪めていた。 「さ、ほら、揃ってんの出せよ」 「おう」 「あっやべーわこれ、俺超きてる、すっげ揃ってる」 「綱海」 「5枚しか残ってねえ、ま、いっか」 「綱海、いいなあ、俺ばらばらだった」 個室の机に備えつけられているスタンドライトを傍らに引っ張ってきただけなので、二人の周り以外は闇にくるまれていた。月も出ていない。円堂は、黒い帽子をかぶったジョーカーを手札の並びからほんの少し、押し上げた。口をヘの字に曲げて綱海がカードを選んでいる。すいと選ばれたのは、ジョーカーだった。 「うーわ」 「やった」 小さな光の円の中、二人の手札はだんだん同数に近づいてくる。そして綱海は、やはり円堂が小さくはみ出させるジョーカーを引き続けた。 「綱海、あのな」 「お前強いのなー、さっきからババしか引いてねえよ、俺」 「…つなみ」 「分かりにくいのは嫌だろ?」 おとなしく甘やかさせろって。いいよな? 夜はゆっくり、笑う綱海の口元に引き寄せられていく。小さな光の円の中では、彼の黒い瞳までは見えなかった。 |