両片思いにぎゅんときた結果がこれだよ


熱を出した。のどは痛くない。鼻水も出ない。咳も出ないし、関節も痛まない。熱だけが出た。ゆっくり休むようにと言い含めた瞳子が部屋から出ていくのを見送りながら、砂木沼は長いため息を吐き出した。瞼を閉じる。ちりり、と赤だの緑だの、そしてついにはだいだいだ。乾いた口の中で名前を転がす。途端に胸が痛くなるというのは納得いかない話だ。舌先はじっと響きを味わっている。おさまると胸の痛みも落ち着いた。考えないようにしなくては。丸い栗色の目、意志の強そうな眉、小さな鼻、笑む唇。日に焼けていない首筋に、しなやかな腕。体のわりに大きなてのひら、ひざ小僧の裏どうのこうの、
「眠らねば」
自制が出来ていないからこうなる。砂木沼は口元を固く引き結んだ。


皆勤賞狙ってたのに、とぼやく息子の額に手を当てた。昨晩と変わらず並々ならぬ熱を持っている。温子は無理言うんじゃないのと息子の額を指で弾いた。部屋を後にする。その後ろ姿を眺めながら、円堂は布団の端を握りしめた。明日も学校に行けなく…いや、サッカー出来なくなったらどうする。無理矢理瞼を下ろして、円堂は布団をかぶった。少しだけ灰色っぽい、黒くて長い、きれいな髪の毛。サッカーしてると本当に楽しそうに光る鋭い目。頭の良さそうなおでこと、自分よりずっと白い肌。耳の中が笑い声に支配される。なんだかこちらまで笑いたくなってきた。そうだ、彼とやるサッカーはあんなにも楽しい。彼も同じように思ってくれているからこそああして笑っ、
「砂木沼うるさーい」
鳴りやまない声。頬が緩むのが止められなかった。




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