「しかしまあ、この手配書を初めて見た時は笑ったぜ。お互いに成長しても、全く顔は変わらないときた。双子ってのはおもしれえなあ。」
「お陰様で、最近出先でしょっちゅう勘違いした賞金稼ぎが襲ってきますよ。」
「だからそんな目深にキャップ被ってたのか。」
「昔から性格知ってる奴からしてみれば、行動が全く違うから間違えることもないんだけどな。」
「ですよねえ。」
「勘違いといやあ、あの話じゃねえか?おい巴、また話してくれよあの話!」
「あの話?」
「あーあれか。エースの話だろ?グランド・ラインで初めて会った時の。」
「そうそう!それ!」
「ああ。あはは、あれですか。それじゃあ…夕飯ができるまでのお暇潰しに。」
と肩越しに振り返れば、各々好きな場所で寛ぐ四人が四人とも、こちらを向いて愉しそうに話を待つ姿勢が目に入る。
─ああ、昔からこの人達はそうだった。子どもだったあたしや兄のくだらない夢や話をちゃんと聞いてくれて、そして友達と呼んでくれた。それが今でも変わらないから、もう台がなくてもキッチンに立てるほど大きくなったというのに、まるでマキノさんの居酒屋で手伝いをしていたあの頃に戻ったような錯覚を起こす。
でも、その懐かしい光景に、大事な一人はここにいない。
不意に頭を掠めた当然の事実に、冷える頭を振り切るように顔を戻す。
本当に欲張りな奴だなあ、あたしは。会いたかった人達が四人も、わざわざ自分に会いにここまで来てくれたというのに。
「…巴?」
「あれは、あたしが海軍に入ったばかりで、グランドラインで研修を受けていた時の話ですね。」
東の海のとある島の、とある入江の船付き場に、ちょこんと建っている灯台兼海軍派出所で、四皇の一人がプリンを頬張って昔話をしているなんて、一体誰が想像するだろうか。誰もしないだろうな。
だからそう、こんな夢みたいな状況なんだから、今は素直に喜んでいよう。余計なことは忘れよう。
「あたしが初めてエースさんに会ったのは、その研修途中のことでした。」
まあ結局この話も、最終的には忘れたい所に到着してしまう話なんだけれど。