住処をあの城と決めてから、程ない頃の話だ。

ふらりと立ち寄った島にあったヒューマン・オークションを見つけ、ふと思った。城を住み良く、最低限快適にする為には人手がいる。が、何処かで雇うのも面倒だ。まともな紹介所を使えば時間もかかる。気に入らない者が自分の住処に居るというのも面白くない。ならばいっそ仮にでも職業斡旋所を名乗っているなら、此処で見つけてしまえばいいのではないかと。

そんな発想の根元の半分は、持て余した退屈からだった。無論、奴隷を飼う趣味など無い上に、どう考えても雇うより金がかかる。半分どころか完全に退屈しのぎのつもりで、俺は健やかに狂った人間が集まる会場へと入った。



『─さあお次は人間の少女・トモエ!歳は14!育ち盛り、働き盛りの無垢な少女を、自分好みに育ててみるのは如何でしょうか!?あどけなさでは今回随一!』



次々と落札されていく様を眺めて、何人目だっただろうか。一様に絶望や憤りに満ちていた商品達の中に、ぽかんと穴が空くように、一人だけ表情の違う少女が現れた。若い少女は買い手が多い。舌の回る司会に煽られつつ、自身の値が上がっていくのを他人事のように見つめる様は、何も理解していないように見えた。

さしずめ、出品される直前まで眠らされていたというところだろう。パニックにならないのは、当然首輪で脅されているからか。

─いや、それにしては余りに恐怖の無い顔だ。少女はぐるりと買い手達の顔を見渡して、自身と同じステージに立つ道化のような司会者をつくづく眺めてから、また客席に視線を戻す。


その時、目が合った。

静かに周りを見渡していた少女の目が、何かを見つけたように突如、自分に向けて止まった。最後尾に近いこの席で、ステージ側からは暗く見えにくい筈だと言うのに、その目はぴたりとこちらを見据える。

七武海としてこの名も顔も知れ渡っているとは言え、自身が売られる寸前の状況で、物珍しさに見つめてくるとは随分脳天気な少女だ。無垢にも程があるだろう。

呆れてそう思ったというのに、気が付けば競り上げられた倍以上の値段を提示し、競り落としていたのが俺自身なのだから、全く意味が分からない。






:その目は今まで見た誰にも似ていなかった






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