「妬いてもいねえってことは俺がどんな女といようが関係ねえってことかあ!!?あ゛ぁ!!?」
「いや、別にそういうわけではなく。まあマカロン食べきりません?」
「話を反らすなあ!!!」
「反らしてるつもりはないんです。あたしも色々考えたんですよ。」
「…あ゛ぁ?」
「お二人が並んでるのを見て、すごく綺麗だと思いました。余計な色がない白黒が、素敵だなって。だから色付けしようと思ったマカロンも止めたんです。モノトーンにしようって。」
「っ…!!!やっぱり当てつっ」
「お二人で沢山、色んな経験をしたんだと思いましたよ。ただルックスがお似合いなだけじゃ、あんな風に綺麗だとは思わなかったと思います。きっとお互いが今のお互いを作る要素になったんじゃないでしょうか。」
「……。」
「だからあたしが今のスクアーロさんを好きなのは、その経験があってこそでしょう。あの方があってこそでしょう。だから全然、妬いたりなんだりしなかったんですよね。それはスクアーロさんの歩いてきた道なので、あたしは嫉妬のしようがないです。でも、流石に目の前で見せつけられると女として不安もあるので、」
「……。」
「食べちゃって下さい、このマカロン。」
重なる白と黒。綺麗なモノトーン。これはお似合いの二人そのもの。この人の経験。
今度は投げ入れるわけではなく、目の前に差し出したマカロンを、薄い唇の割に大きな口が一口で呑み込んだ。
含んで噛んで飲み込んで、その喉を通っていくのを外から見れば、不思議なことに安堵する。
ああ、やっぱり、これでよかった。二人の影はもうあたしには見えない。あるのは経験を咀嚼して身になった、目の前のスクアーロさんだけ。
たとえ恋人でなくても、これがあたしの好きな人。
「あたしが恋人なのかそうでないのか、あの人が恋人か元恋人かはどうでもいいんです。心のぶつかり合いを繰り返して成長したスクアーロさんが、今、あたしの隣にいます。」
それが幸せです。
と、言っている間に口を塞がれてしまったけれど、ちゃんと最後まで聞こえただろうか。あれ、これさっきマーモン君に似たようなこと思ったような。いやいやこれは後半の言葉も大事だからちゃんと伝わっていて欲しいところだけど。
「てめえの目の前の男が恋人に選んだのはてめえだ、巴。堂々としやがれえ。」
さてはて、いつものお高いこのニヤリ顔、ちゃんと伝わっているのかどうか。
【白い恋人】
(…あれはラングドシャでしたね。)
(あ゛ぁ?)