「君が好きだ。」

「はい。」

「馬鹿で頑固で可愛くなくて意地っ張りでひとりよがりでいつまでもコンプレックス引きずって自己満足ばっかりの君が、好きだよ。」

「は、い……ふふ、」

「なに。」

「いえ。あの、趣味悪いなあ、って…。」

「うるさいよ。」



余計な事を考えてないで、早く泣き止みなよと雲雀さんは言うけど、余計な事の一つでも考えてないと、現実味が持てないこの空間で意識が飛んじゃいそうなんですってば。

ほんと可愛くないなあと自分でも思うけど、雲雀さんが好きだと言ってくれたんだから、いいか。ああほら、もう執着し出した。いつか、が来るのが、怖いなあ。

一瞬そんなことが頭を掠めて、自嘲めいた笑いが零れそうになった途端、どさり、急激に全身を圧迫する重さに我に返る。おっ…重い…!!



「ひ、雲雀さん…!急に全身で潰さないで下さい!い、息がっ…!」

「…すっきりした。」

「へ…え?」

「やっと言えてすっきりした疲れた。…お風呂に入って、早く寝よう。」



人を敷き布団にしたまま雲雀さんはそう言うと、ふわ、と眠たそうな欠伸を耳元で一つ。

相変わらずの切替の早さで…ぐずぐず引き摺るタイプのあたしとしては見習いたい限りですと心底思ってから、あたしの我が儘な希望が雲雀さんのプラスに働いていた事が、素直に嬉しい。


お互いの需要と供給が噛み合うのも、恋人同士ならではの、醍醐味なんですね。





「雲雀さん。」

「なに。」

「不束者ですが、できる限り末長く、宜しくお願いします。」

「…君は相当咬み応えがありそうだから、ゆっくり咀嚼させてもらうよ。」

「はい、頑張って下さい。」

「ばか。」





優しい声で罵られて、かぷりと噛まれた右頬に笑う。六時間も戦い続けて疲弊しなきゃ、弱音も言えない面倒な奴でごめんなさい。


でも本当に、大好きです。









「僕の方が好きだ。」








負けず嫌いを滲ませるその物言いに、ああ、また、咬み砕かれていく。






【break,smash,crush,crunch】
(うわあ見事な桧風呂…って、え?お風呂入るとは言いましたけど…まさか一緒にってわけじゃないですよね…?)
(これも恋人だから堂々とできることの一つだね。)
(いやいやいやいや…!!!)





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