「そんなん毎日一緒に寝ればいい話だろお。」
「スクアーロさんご自分の職業考えて発言して下さい。無理です。」
「だからできる限りで毎日いてやる。」
「中途半端が一番辛いので現実的にはベッドをシングルサイズに変えて頂けるのがベストです。ていうか一体誰ですかあたしのベッドをキングサイズチョイスした人は。」
「ならまず一週間はいてやる。偶にはワガママ言ってみろお。」
「突っぱねてるのが十分ワガママだと思います。」
「それはお前の為じゃねえだろ。」
「あたしの心の平和の為です。」
「そんなんクソ喰らえだあ。」
「うわあ…傲慢…。」
ああやっとだ。やっと笑った。
顔は見えねえが、背に回した手のひらと密着した体に伝わる振動が心地いい。妙に満足感に満たされているのは、コイツが稀にしか見ない俺への執着心を露出したからか。
相変わらず硬い髪を後ろから撫でれば、いつものように嫌がって頭を振る、可愛げのない恋人。
「いいか、一週間は素直に床に入れろお。」
「床って…本当に日本語達者ですよねえ…。」
「もう寝るぞ、俺は疲れた。」
「…ちなみにもう聞く必要もないかもしれませんけど、」
「あ゛?」
「何でさっきあたしがルッスーリアさんに言われて扉開けたか分かりましたか。」
「だから何でアイツに応じたんだお前はあ。」
「…あのですね、二人で寝ることに慣れるのは怖いと言いましたけど、」
「う゛おぉい!話を逸らっ」
「相手が誰でもそうというわけではないんですよ。」
「…………。」
「スクアーロさん、そこで手が下に下がる理由が分かりません。」
「お前こそどこで男の誘い方覚えてくるんだあ。」
「…何を誤解したのか知りませんけど…ちなみに寝るって変な意味ではないですからね。さっきスクアーロさんが言っていた通り。」
「一週間生殺しにさせる気かお前は…。」
「偶には喧嘩してる時以外も名前で呼んで欲しいものです。」
「…襲われたくないなら、もう刺激しないで寝ろお。」
巴、と呟けば、ようやっと力が抜ける小さい体。
どうせそうだろうと思っていたが、あっと言う間に深い眠りに落ちたそれを、仰向けになった自分の体に乗っけて、布団を掛け直して息をつく。俺は母親か。
「…生殺しだ…。」
重なる体で繋がらないくせに、甘さだけは異常に染み込むこの状態。
辛い、ような、悪くない、ような。
ベルは俺がコイツに甘いと言ったが、もしそう見えるというなら、それはコイツの収まらない甘さが、俺に染み込んだというだけなんだろう。
反発しつつも、いずれは同化する俺達はまるで、
【チョコレート・パイ】
(起きろカスが。)
(ぶっ!!う゛お゛ぉい!!何しやがんだ折角寝に入っ…ぶふ!!!)
(俺のウイスキーに手を出すとはいい度胸だ。このカスが。)
(てめっ…!せめて空気読めえ゛ぇ!!巴!!オイ起きろ巴!!!)
(………(爆睡))
(う゛お゛ぉおい!!!!)
(あの二人って上手くいってるのかいないのかよく分からないわあ。)
(ししっ!フツーに上手くいくなんてつまんねーだろ。)