「まさかまさか。」



うわーびっくりした。起きがけに突っ込みも入るってもんだ。



「雪だー…。」



昼休み、屋上で昼寝をするにはそろそろ限界かな、と思いつつ、折角上がって来たし人もいないしと、いつものように空を仰いで寝転がって十数分。妙に顔が冷たくて目が覚めた。頬に手を当てると、指先で溶ける感触。なんと、自分にうっすら雪が積もっていたという。

ちょっと待った、今ってまだ11月じゃ…。確かに今日はグッと冷え込んだと思ったけど、フライング過ぎやしないか。



「遂に冬眠でもするのかと思ったよ。」



体中の雪を払っていると、斜め上から雪ではなく声が降ってきた。誰の声かは何となく予想がついたので、なるべく平常心を己に言い聞かせ、振り返る。

が、



「……。」

「…?なんだい、その顔。」

「えーっと…雲雀さん、頭のそれは、雪ですよね?」



扉の上に座っていたのは、やはり雲雀さん。それは予想通りなのでいいとして、予想外だったのはその頭のてっぺん。いつもはその学生服よろしく真っ黒な髪が、白く染まっている。



「ああ、積もったね。」

「ですよね…!びっくりした…。」

「君だって積もってたじゃないか。」

「いや、パッと見、白髪に見えて…。タイムスリップしたかと思いました。」

「…随分寝惚けた発想だね。」



言いながら、パタパタと頭の雪を払うと、いつもの雲雀さんが戻ってくる。
いやあ、確かに寝ぼけた発想には違いないけど、髪の色の印象って強くて。雲雀さんは歳をとってもあんまり老けなさそうな顔だしなあ。



「すみません、ちょっとしたコールドスリープ気分で。浦島太郎って、陸地に戻った時こんな感じだったんでしょうね。」

「本当にコールドする前に戻った方がいいよ。」

「はい。」



立ち上がって、もう一度雪を払って、一足先に扉の中に戻っていった雲雀さんの後に続く。階段の数段下を行く彼の頭には、払い足りない雪が一欠け見えた。



「雲雀さん、後ろ頭にまだ雪残ってます。」

「払って。」

「あ、はい。」



触っていいんだ、ちょっと意外。しかしこの距離感、彼の隠し持っているトンファーが唸れば十分に届く間合いなので、粗相をしないよう、細心の注意を…



「僕は、白雪姫を見た第一印象はこんな感じかと思ったよ。」




細心の注意を払いましたよ、ええ。でも、まさかそんなことを言われるなんて、普通、露にも思わないじゃないですか。だから、払った雪が首筋に落ちたからって、振り返り様に全力で一撃入れようとしないで下さいよ!





コールドスリープ




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