*負傷中の道士郎と近所の巴



「それで、後はどこを負傷したんですか?」

「いや、拙者、怪我などしてござらん。」

「あ、踵ですね。」

「怪我などしておらんと言うておるだろうがあ!!」

「怪我をしていないと自分の身の安全を主張するだけで騒音を立てて近所迷惑を起こすのが武士なんですか。」

「武士は断じてその様な者ではない!」

「それはよかった。じゃあ静かに座って怪我をしてない証拠に踵を見せて下さい。」

「ウム。しかし手当てなどは要らんぞ。」

「はい分かりました。それはそうと、あたし最近、手当ての練習をしてるので、ついでに練習台になって下さい。いつか立派な殿方に嫁いだ時に恥をかかない為の花嫁修行なんで。」

「フム、修行とあらば仕方がない。」




「…と言うわけで、奇遇にも近所の子どもの女が花嫁修行の相手を探しておったのでな、ついでに不要な手当てを受けたおかげで、この通り治った。」

「(近所の子どもの女、扱いを心得てる)いや、それでも治ってねーから病院行けよ。」

「ハッハッハ、拙者は武士ゆえ、心配は無用よエリタン。」

「エリタン言うな!!」




*考えがある道士郎と近所の巴


「あの…ここ連日の尾行は一体なんですか、桐生道士郎さん。」

「むう…ター族仕込みの斥候術がこうも毎回見破られるとは…やはりおぬし、なかなかの使い手と見た。拙者もまだまだ修行が足りぬ。」

「え?裸族?」

「?何の話をしておるのだ?」

「桐生道士郎さんが毎日尾行してくるのは何でかなって話をしてます。」

「ハッハッハ、ではまた明日。」

「ええー…。」



「今日も成せなかった…。想像以上に手強いのお。」

「だから、普通に手当ての礼だって渡せばいいだろ。」

「拙者、手当てなどされておらぬ。あれは手当ての練習台であってだな。まあ、結果的には拙者も多少助かったのでな。」

「…(義理やら約束やらウルセーくせになんでそこだけ頑なだよ)。」

「しかし、近所の子どもの女も、練習台に使った相手に礼など貰ったら戸惑うであろう。あれは律儀な子どもだ、一丁前に遠慮などしかねぬ。そこで、拙者とバレぬよう、この礼の品を配置するのが名案と見たのだが、まさかあの様に鋭い察知力を持った子どもとは、甘く見ておったわ。ハハハ。」

「…そーかよ(子ども、忍者か何かかな)。」

「この道士郎、ター族と武士の名にかけて、あやつとの勝負、確かに受けて立った。女こどもと、外見のみで手加減をした己を恥じ、全力で臨もう。これは真剣勝負よ。」

「ぜ、全力は止めとけ。」




*武士としての礼を尽くす道士郎と最悪の事態に備える健助殿


「…道ちゃん何書いてんの?習字?」

「おお、健助殿。これは果たし状だ。」

「ヘェー…果たし合うの?誰と誰が?」

「無論、拙者と、敵だ。」

「どうしてそうなった!!果たし合いて!敵て!いつの間に!どこで!」

「数日前じゃの。近所じゃ。」

「近所…!?(いやまて、そもそも道士郎が果たし状を書く…?今までなかったパターンだ。と言うことは、今までになかった相手だってことで…これまでの敵は、MAXでヤの付く人…これ以上ヤバいって、ま、まさか遂に国家権力に)」

「殿はご安心召されよ。これは拙者の個人的な果たし合い。それに敵は敵でも、好敵手と言って過言ではない相手。果たし状は、今まで甘く見ていた非礼を詫びる意味でな。命まで取るような決闘ではない。」

「そ、ソッカァ〜(命まで取らなければ何をしてもいいとも取れるぞ。第一、道士郎にそこまでされる相手ってどんな奴だ。武士か?武士なのか?)。」

「よし!出来たぞ!では行って参る!」

「あ、あのさ!それ!俺も観に行っていいかな!?」

「おお!勿論!」

「(状況知らないで急に巻き込まれるよりマシだろう、多分…)」




次回、果たし合い




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