「そしてお互いじわじわ引っ張るの止めてくれません!?大岡裁きですか!!」

「離せ。」

「貴様が離さんかい。」

「ボルサリーノさん!!」

「ア〜…じゃあ平和的にジャンケンでも。」

「だそうですよ!やらなかったら不戦勝扱いです!ジャンケンっ!」

「モエえぇえいっっっ!!!!」



あ、と思った時には決着がついていた。二人の掴んだ手が離れる直前、素直に出された片手はどちらもチョキ。そして今、襖をぶち破ってきた人物の拳は、勿論グー。



「ってなわけで、ガープ中将の勝ち〜。」

「おじいちゃん!」

「モエ!!!やっと見つけたぞ!!」

「ぐえ。」



ボルサリーノさんの手によって、賞品として渡されたあたしの体を力一杯抱きしめながら、ガープ中将こと我らがおじいちゃんは、遅くなったと謝罪を続ける。いや全然!よくぞ見つけてくれましたよ!でもちょっと苦しい…!!



「ガープさん、孫の内蔵出ますよ。」

「黙れ青二才が。モエを見つけたら知らせろと言っとったじゃろうが!ワシを差し置いて一緒になって遊んどるとは不届き千万!」

「つっこむの面倒臭いんで、とりあえず元凶はこっちってことだけ。」

「ふんっ!どうせそうだろうと思っとったわサカズキ!!貴様には近々大量のタマネギをプレゼントしてやる!!」

「…タマネギ?」

「犬はタマネギで中毒を起こすんだよォ。で、ガープさん、そろそろ本気で巴ちゃんが死んじまいますが。」

「おお、すまんすまん。」

「いやいや…うん…大丈夫だよ…。」



熱い包容からやっとのことて解放されて、クラクラする頭にたっぷり酸素を送り込む。毎度のこととは言え、我が祖父ながら愛が力強いなあ…!まあ、もう一人の孫があれだし、その分、祖父孝行として好きにさせてあげないとね。



「ご無沙汰してました、ガープ中将。」

「他人行儀な挨拶は止めろ!寂しいじゃろう!!」

「うん、ごめん、一応三等兵としてね。会いたかったよおじいちゃん。」

「っ…モエえぇえ…!わしも会いたかったぞおぉ…!!」

「えっ、何で泣くの?」

「いやあ、感動の再会だねェ。無事に会えて良かったですねェ、ガープさん。」

「お前も遊んどったじゃろうが!!誤魔化せると思うなよ!!」

「おじいちゃん、プリンケーキ作ってきたよ。」

「なんじゃって!!?なんと家庭的でワシに似て優しい孫に育ったんじゃ…!!」

『………。』



はいそこ、ツッコミすら面倒くさいクザンさんに便乗して三人で無言のツッコミするの止めて下さい。こんな時ばっかりチームワークとれてるんだから…。

兎にも角にも、あたしの監禁タイムはこれで終わりを告げられそうだ。海軍の英雄─もとい、ここではその肩書き以上に、その自由奔放自分勝手っぷりが恐れられるガープ中将が現れては、見張りの部下さんも、当然大将達であろうと止めることはできない。はは…我が祖父ながら改めて恐ろしい、はい。

まあ…今更なことは置いといて、とりあえずは一件落着と、クーラーボックスを肩に掛け、背中に添えられたおじいちゃんの手に促されるまま部屋の外へ向かう。センゴクさんはお元気かなあ、おツルさんには先日送って頂いた梅のお礼を言わなくては。おじいちゃんの部下の皆さんにも、日々の重労働の愚痴の一つも聞いて差し上げなくちゃいけないし、それとそれと…

久し振りにやって来たマリンフォードで、やることは沢山ある。不在中のシフトを代わって貰って来ているから、そうそう長居もできないのに、サカズキさんたらやってくれたなあ。ちゃんと会いに来ますって、毎度言ってるじゃないか。


………うーん…。




「…えー…サカズキさん、クザンさん、ボルサリーノさん。」

「…なんじゃ。」

「ん。」

「うん?」

「あたしももう子どもじゃないですし、世間の波に揉みしだかれて、色々変わることもあるでしょうけど、また会いに来ますよ。約束しますから、サカズキさんはもう今日みたいなのは勘弁して下さいね。クザンさんはだらけるならちゃんとだらけて、応戦するべき所は考えて下さい。ボルサリーノさんは見てるだけならお仕事に戻って、子伝電虫の使い方でも覚えて下さいね。」

「オゥ…俺だけに厳しいなァ…。」

「知ってると思いますけど、傍観者が一番タチ悪いんですよ。」



わざとらしくニヤリとして見せれば、ボルサリーノさんもニヤリ。この腹に一物隠した笑い顔も変わらないなあ。あたしとこの人達との関係は、味方か敵か紙一重。それを思い出させてくれる笑い方が好きだ。


細く脆い糸のような、曖昧な縁で繋がれているあたし達は、それでも顔を見合わせれば、嬉しい。




「モエ!そんな奴ら構ってないでじいちゃんに構え!」

「はいはい。」



今度こそ思い切り腕を引かれて、部屋の敷居を勢いよく跨ぐ。おじいちゃんが開けっ放しにした戸を慌てて閉めようとしたら、見張りをしていたサカズキさんの部下さんにやんわり止められて、代わりに静かに閉めて下さった。…一応常識と良心はお持ちだったようで…!短い時間でも、我の強い人ばかり相手にしていたあたしには新鮮なオアシス…!ていうかお忙しいでしょうに、上司命令だからとこんなくだらない事にお付き合い頂いて…!!



「いつもお疲れ様です…!これ、プリン大福なんですけど、よかったら食べて下さい。」

「あ、いや…」

『…………。』

「!?また暑寒い!!ていうか風!あっ、こら!ボルサリーノさんなんでまた横取りするんですか!育ち盛りの人優先ですよ!」

「さァ、仕事、仕事。」

「ガープさん、俺散歩してきますんで、あとよろしく。」

「…茶ァ。」




…心の底から手のかかるおじさん達だなあ!本当に!!





【親愛なる】



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