「分かった。急に集めて悪かったな。この嬢ちゃんの名前はトモエだ。暫くうちの船に乗せる。てめェら、手出しすんじゃねェぞ。」
「えっ!?」
「おおー!!妹だぜ!」
「馬鹿、暫くつったんだから客だろう。」
「よろしくなートモエー!!」
「あ、は、はいっ!よろしくお願いします!」
「礼儀正しいな!」
…あれ!?何かいつの間にか船にご厄介になることで話がまとまってる!?いいのかこの展開!?いや確かに出てけって言われて海に放り出されたら困るけど…!
しかし強面さん達は話は終わりと散らばっていき、後に残ったのは巨人さんと未だその手のひらに座って固まっているあたし、そして、数人残った男の人。と、
「オヤジ、別に俺らはオヤジの意向なら構いやしねェが、いいのか?」
「え…わっ!?」
「マルコ、ビビらすんじゃねェ。」
「こりゃ失礼したよい。」
何と、空中に両腕が翼というか炎というか、青い何かに包まれた男の人がいた。な、何これ…死ぬ気の炎応用編…?バジル君も青かったし…。でも腕の原型留めてないし、何よりそれで羽ばたいて空中を浮かんでいる。本格的にファンタジー…!
「マルコ、航海士と野郎共に伝えろ。進路を変更する。この間海戦した場所まで戻ってくれ。」
「そこでこの嬢ちゃんが紛れ込んじまったってことか?」
「まだ分からねェが、可能性ならある。お前らに心当たりがねェなら、トモエは俺の拾いモンだ。帰せるまで面倒見るぜ。」
「分かったよい。」
「トモエ。」
「は、はい。」
「話の通り、おめェが元居た場所に帰るまで、この船でおめェを預かるぜ。自分の家だと思って好きに暮らしな。」
「い、いいんですか?」
「構わねェよ。ここは見た通りの大所帯だ、リスが一匹厄介になるくらい屁でもねェ。それに、おめェを呼んじまったのは、俺のせいかもしれねェからな。」
「え…?」
「とりあえず、船のことはコイツらに聞くといい。この船の奴らは全員俺の息子だ。気兼ねせずに頼るといい。」
「、っと…!」
エレベーターの浮遊感再び。今度は降下して、ここで漸く床に足を付けた。そして今更に気付いたのは、あたしの格好が着付けしていたそのままだったということだ。しまった…!これ夢じゃなかったら、間違いなくお高いお着物を着てきてしまったということに…!
「おー、降りて見るとまた小せェなあ。」
「とりあえず、同じワノ国の人間のイゾウが面倒みてやるのがいいだろう。」
「ふん…まあいいけどな。しかし下駄も履いてねェのか。」
降ろされた途端、さっきの青い炎の人を含む男の人達(あ、青い人の腕ちゃんとあった…)に囲まれて、とりあえずよろしくお願いしますとお辞儀をする。何はともあれ挨拶は大事です。正直展開についていけてないから反射だったけど。体育会系の本能って、身に染み着いてるよなあ。
…っていうか、一番大事なことを聞くのを忘れてた!!
「あの!」
「ん?」
男の人達があれやこれやと話している間に、振り返って巨人さんを見上げる。しっかり耳を傾けてくれる姿は、今会った人の中で誰より大きいのに、雰囲気は誰より優しい気がした。突然出会って間もないのに非常に落ち着く。
まるで九代目みたいな、ゴッドファーザー的な包容力だ。船員さん達を息子と呼んでるところもそれっぽい。だからこそ聞いておかなければいけないことがある。
「えっと…とりあえず名前、聞くのを忘れてました。すみません。」
「…俺は白ひげだ。」
「しろひげ…?え、本名ですか?」
「くくっ…グララララ!!」
「え、え?」
「グラララ…!あァあァ、そうだな、通り名で名乗るなんておかしいな。俺の本名は、エドワード・ニューゲートだ。」
「エドワード、さん。」
やっぱり外国の方かあ…しかし通り名って…通り名ってあれでしょう?『跳ね馬』とか、『毒サソリ』とか『スモーキンボム』とか…。
うう、本題を聞くのが怖いけど、今聞いておかねば…!
「エドワードさん、ここって……マフィアのファミリーだったり、するんですかね…?」
「…エドワードさんなんて呼ばれたのは、何十年ぶりだろうなァ…。」
「?」
「グララララ!!!俺達は、海賊だ!!」
わあ、笑顔でまさかの回答。
ちなみにマフィアと海賊、どっちの方がマシだったかと言われれば、何かもうよく分からないです。