「果てろ!!」



低い軌道を描いて、ダイナマイトが投げられる。

それに合わせて、あたしは真っ直ぐ彼に向かって走り込んだ。



「なっ!巴!?逃げろってば!!」



いやツナ、妹が心配ならちょっとは何かしなさいってば。

心の中でツッコミながら、目の前に着弾しかけるダイナマイトを片足で思い切り跳ね除ける。空へと向かうダイナマイトには視線をやらない。
狙いは、ただ一つ。



「!」



驚いたように目を見開く彼が見えた瞬間、ダイナマイト達が一斉に爆発した。

初めて間近で聞く爆発音は凄まじく、感想はと訊かれればとんでもないとしか言いようがない。



「っ…!」



耳、痛い。しかも爆風が熱い…!!
それでもクリーンヒットしてないだけマシか…!



「うわ…!巴ー!!」

「…死んだか。」

「いやいや勝手に殺さないでね。」

「っ!」



丁度良く姿を隠してくれた爆煙から飛び出し、彼の隙をついて蹴り上げたあたしの跳込み蹴りは、僅かに彼のシャツを掠めただけ。

んん…惜しい。



「てめ…っ!!」



再び彼の手に握られるは、勿論ダイナマイト。

でも残念、接近してしまえばダイナマイトは投げられない。あたしなんかと道連れなんてごめんだろうし。狙いが的中してよかった…。

距離を取る為に繰り出してくる蹴りを避け、払い、あたしはあくまでも距離空けず逆に詰め寄っていく。伊達に毎日朝練してませんから!



「クソが…っ!」



なかなか引き離せなことに焦れたのか、まさかまさかで、彼は持っていたダイナマイトに着火した。

、っ自爆するつもり…!?いや、だからと言ってここで間を置いても危ない…!

とか考えている間に、獄寺隼人君はもう一度あたしに蹴りを放つ。そして、それをあたしが避けた瞬間、



「果てろ!」

「!?」



ダイマイトを、投げた。

あたしではなく、ツナに向かって。


ああー、その手があったかあ。……ってツナっ!!!



「ぎゃあぁぁっ!!!」



しまった!この距離じゃ助けられない!!

ひやりと悪寒が背筋に走った、その時。



「死ぬ気で戦え。」



ズカン!という発砲音と同時に、ツナの脳天に赤い穴が空く。─死ぬ気弾!



「リ・ボーン!!!死ぬ気で消火活動!!!」



出た!死ぬ気タイム!でもやっばりいつも自動的に服が脱げるのはどうかと思います!

なんて思いながら、とばっちりをくらう前に、驚いて動きを止めた獄寺隼人からそそくさと離れる。やっぱり初見はついていけない展開だよね!



「消す!!消す消す消す消す消す消す消す消す!!」



気合い一発、ツナは物凄い勢いで爆発寸前の導火線を素手で消していく。

すごいねツナ!パンツ一丁だけど!



「っ…2倍ボム!!」



ツナの曲芸ばりの動きに我に返った獄寺隼人君は、言葉通り先程の二倍のダイナマイトを更に投げる。が、それも死ぬ気状態のツナには無駄に終わった。

ムキになったらしい彼は、今度はまた更にありえない量のダイナマイトを出してくるときた。…さっきからそれはどこから出してるの!?



「3倍ボム!!!」



ああ、そんなに沢山抱えたら一本くらい落としちゃうんじゃ…。

という予想を、こんな時に限って律儀に外さなかったから、彼は意外と芸人向きかもしれない。



「!」



って、わあああ!!!ホントに落としたよこの人!!

落ちた一本に動揺したのか、なんと他のダイナマイトも次々落としてしまうという負の連鎖まで披露してくれたんだけど、本当にヤバいってばこれ!!



「しまっ…!」



勿論、既におおよそ着火済み。あれを近距離で受けたらひとたまりもない。め、目の前で爆死を見届けるなんて勘弁して下さいぃ!!!



「ツナ!!助けてあげて!!」



気付けば、あたしはそう叫んでいて。

そしてツナは、あたしが叫ぶよりも早く、一本目のダイナマイトを消していた。



「消す!!!消す!消す!消す!消すっ!」




死ぬ気の消火活動、恐るべし…。

猛烈な勢いで消されていくダイナマイトとツナを至近距離に、獄寺隼人君はそれをただただ呆然と眺めていたのだった。







「はぁ〜なんとか助かった〜…。」

「ツナ!手、平気!?」



ダイナマイトを完全に消しきって、死ぬ気タイムが終わったツナに駆け寄り、まずはその掌の確認。

あれだけの火を素手で消したにも関わらず、その手は火傷一つ無い。死ぬ気タイムの恩恵かあ…と、あたしほっと息をついた。



「あ…巴…。さ、さっきは助けてくれて、ありがと…。」

「あー…うん、お互い無事で良かったね。」



言って、どちらともなく気の抜けた笑いが零れてくる。

と、その時。



「御見逸れしました!!!あなたこそボスにふさわしい!!!」

『っ!!?』



やたらとでかい声が後ろから聞こえて、二人同時に肩を跳ね上げる。そしてやっぱり同時に恐る恐る振り返れば、そこには土下座態勢の獄寺隼人…君…?

え、えぇ…?一体今度は何事?



「10代目!!あなたについていきます!!なんなりと申しつけてください!!」



さっきまでの気迫はどこへやら、彼は一変、興奮したように嬉しそうな顔をこちらに向けてきた。



「はぁっ!??」

「ちょ…ついていくとか大袈裟じゃない?」

「負けた奴が勝った奴の下につくのがファミリーの掟だ。」

「え゛え゛!!?」



いつの間にか傍にいたリボーンの言葉に、ツナは心底嫌そうな声を出す。

それに構わずすっかり大人しくなった獄寺隼人君は、ぽつりぽつりと今までの経緯…というか、真意を話し出した。



「オレは最初から10代目ボスになろうなんて大それたこと考えていません。ただ、10代目がオレと同い年の日本人だと知って、どーしても実力を試してみたかったんです…」



試すのもいいけど…完璧に加減なしだったのがちょっと…。加減出来ないタイプなのかなぁ…?いや、彼の武器じゃ洒落にならない。



「でもあなたはオレの想像を超えていた!オレのために身を挺してくれたあなたに、オレの命預けます!」

「そんなっ!困るって命とか…。ふ…普通にクラスメイトでいいんじゃないかな?」

「そーはいきません!」



そう言い切って、獄寺君は決意の籠もった視線をツナに送る送る。ただし、決意の籠もったって言ってもあの目つきは睨んでるようにしか見えなくて、ツナは蛇に睨まれた蛙さながらに反論できなくなってしまった。



「それに巴さん!」

「はっはい!?」



突然矛先がこちらに向いて、あたしは若干身を退く。さん付けとかいいですよーなんて言える状況じゃないね!



「女であるにも関わらず、自分の兄の為に命を賭けるその心意気!感動しました!オレはこれからあなたの兄の部下です!何か厄介事があったら呼んでくださいね!喜んで手伝いますから!!」

「え、や、あ、あたしは別に10代目とかには関係ないから、気にしなくていいですよ。」

「いえいえ!遠慮しないでください!」



こ、これは困った…この人なかなか思いこみ激しいみたいだね…!!悪い人ではなさそうだけど…!ぎ、ギャップが…!!朝からのギャップが激しくて、ついていけない!



兎にも角にも、ツナ、初めてのファミリーゲット。

と同時に、平凡さがまた一つ…いや、今回は三つくらい、減っていくのが分かった。


……え、この展開って、これからどうなるの…?








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