【城島の証言:七月夏休み、黒曜中学にて】



「巴さんっ!!」

「わ、城島君。久し振り。元気だった?」

「お久しぶりれす!元気れす!だから肝試しするびょん!」

「うん、だからの使い方が斬新だね。」



ってわけで、巴さんと肝試しすることになったびょん!二人きりで!

何故二人きりかってーと、根暗メガネと根暗女がビビってついて来なかったから。これだから根暗はつまんねーんら。



「でもいきなりだね、肝試しって。時期だけど。」

「何か最近、校内に女のユーレイが出るって噂なんれすよ!」

「え、黒曜中学に?」

「そうれす!音楽室近くの階段で、足の無い女子が登ってたのを宿直の教師が見たらしいびょん!」

「へえ…足。」

「こう、スカートと靴下の間の足が透けてたんれすって!日本のユーレイ足無いんれすよね!?本物かもしんねーびょん!」

「うーん、どうだろう…って、真正面玄関から柵乗り越えちゃうんだ。完全に不法侵入だけどいいのかな。」

「だいじょーぶれすよ!何なら巴さん担いで上がるびょん!」

「遠慮しときます。…まあ、廃墟をアジトにしてるんだから今更かぁ…。」



何だか遠い目をしながら、巴さんも軽々柵を乗り越えて、いざ肝試しスタートだびょん!

そういやこれって、お化け屋敷とかでよくある流れを期待できるんじゃないれすか!?キャー!ギュッ!みたいな!!……あー、でも巴さん、全然真顔だびょん。問答無用で怖がってねーびょん。元々肝座ってんもんなあ…。とは言っても希望は捨てられないれすね!!何故ならケンゼンな男の子らから!



「黒曜中って初めて入ったなあ。」

「かんそーを一言!」

「不良が多そう。」

「流石巴さん!的確れす!」



他校と比べりゃ確かに荒れ果ててんもんな!まあ仕方ないれす。元々不良が多い所を骸さんが引っ掻き回せば、あっと言う間にこんなもんれすよ!

胸を張って自慢すると、巴さんはちょっと苦笑い。そんで何か思い出したように、そういえば、と呟く。



「うちの並中にも似たような噂あったよ。女の子の幽霊の話。」

「へー!それはどんな奴なんれすか?」

「殆ど同じかな。足が無い女の子が音楽室に居るって。」

「学校の怖い噂とか似たり寄ったりれすよね〜。」

「音楽室って授業ない時間多いし、静かで居心地が良いらしいね。ただ今は、音楽室改装工事してるからうるさいだろうけどねえ。」



全然怖い感じも無く、たらたら話をしながら無人の校内を歩く。あーあ、巴さんも黒曜らったらなー。そしたら毎日こんな感じなんらよな!テンション上がるびょん!

ニヤニヤしてたら首を傾げられたけど、全然気にしねーれす!ってなことやってる内に音楽室到着だびょん!



「全然何も出なそうれすけど、心の準備はいいれすか!?」

「うん、どうぞ。」

「んじゃ、オープン!!」

「…あれ。」

「あ、」

「あ?」



思いっきりスライドした扉が、若干跳ね返って戻ってくる入り口から、奥を覗き込む。

なんと、中に人影はあったんだびょん!!しかもマジで女!見たことねーセーラー服着た女!!

でも不思議な事に、めちゃめちゃクリアなんれす、そいつの姿。ユーレイって、もっとぼやぼやしてるもんじゃねーの?…ってゆーか、普通に人間じゃねーか!!



「巴ちゃん。」

「へっ!?」

「ちょ、ええ!?どうしたの!?何でここにいるの!?」

「な?巴さんの知り合いれすか!?」

「あっちが今騒がしいから…ちょっとだけここにいるの。」

「あっちって、どっちだびょん!」

「あー…そっかぁ、心配してたけど、よかったよ。それにしてもよく移動できたねえ。」

「心配って何の心配れすか!?」

「…心配しちゃ、だめだよ…それに、ここ怖いから、静かになったら、すぐ帰る。」

「あん!?巴さんに心配すんなとかここが怖いとか失礼だびょん!」

「そっか、うん、気をつけてね。」

「巴さん!無視しないでくらさい!!」

「巴ちゃん、ばいばい…。他の子に、気をつけてね…。」

「だからてめーは何なんだびょん!!」

「犬ちゃん帰るよー。」

「巴さん!!」



シカトよくないれすよ!!何なんれすかその柿ピーより激しいシカトっぷり!なのにあの女には、いかにも友達っぽく話してっし…!!気にいらねーびょん!あくまで巴さんじゃなくてあの女が!!



「あいつ誰なんれすか!!シメるびょん!!」

「シメれないよ、幽霊だからね。」

「ユーレイでも何でも!!!……って、へ?」

「さっき話してた、うちの中学の音楽室に居る女の子だよ。」

「えっ、…はっ?」

「工事してたから、こっちに避難してたんだね。よかったよかった。」

「あー…えーと、つまり、あれは並中の幽霊、ってことで合ってます?」

「うん、正解。妙に共通点あるなあと思ってたんだけど、いやーびっくり。」

「…でもあの女、並中の制服じゃなかったびょん。」

「あれは並中の昔の制服だよ。ほら、雲雀さんが学ラン着てるけど、あれも本当は旧制服。今のイチョウ色より、昔の方が良かったよね。」

「巴さんのセーラーとか、骸さんが超テンション上がりそうだびょん!!着てくらさい!」

「うん、止めとく。テンション上がった六道さんほど面倒なものもないと思う。ていうか、あたしが着たところで何一つ上がらないから。」

「えー!!!絶対似合う…じゃなくて!!つーことは巴さん!ユーレイと喋ってたってことじゃないれすか!!」

「うん、学校同じだもん。」

「日本てみんなそんなんなんれすか!!?ユーレイも同級生!?」

「同級生じゃないし、みんなそうではないだろうけど…まあ縁だよ、縁。城島君と柿本さんが六道さんに出会ったみたいなね。」



むーなるほど…まあ骸さんも人間離れしてっしなぁ。人のことは言えねーれすけど。寧ろ類友れすよねー。…ってことはつまり、巴さんとあの女も類友…?いやいやねーびょん!

ブンブン頭を振ってる内に、いつの間にやら校門の前に来ていて、巴さんはさっさと門を飛び越える。巴さん、いっつもギリギリパンツ見えねーんらよなー、と思いながら俺も続いて飛び越えた。ら、




「あんまり刺激しないように、気をつけて。」




振り返る巴さんの表情が、急に変わった。

俺が肝試しに誘ってからほんのさっきまで、柔らかくてちょっと淡々としてるいつもの巴さんだったのに、今は違う。俺らが時々この人を、骸さんと被って見てしまう、強い目だ。



「え…、」

「…後ろ振り返れば分かるよ。」



振り返ってみる。



「んげっ……、」




つーわけで、肝心の今日一番肝試しっぽかったとこと言えは、振り返ったその先、音楽室近くの踊場の窓。そこは教室の窓と違って全身が見える窓なんらけど、そこにあいつが立っていた。

巴さんだけじゃなくて、あっちもばっちり豹変してるとか。超恨みがましい表情で、両手を窓に付けてこちらを凝視しているときたびょん。ユーレイのくせに、巴さんの前で猫被ってたなあいつ!

つっても正直、恨まれるのなんて慣れたもんれすし?そんぐれーじゃ脅したことにもなんねーびょん!と鼻で笑っていたのも一瞬だけ。無駄に良い視力を持った俺の目は、そいつの足元見てしまった。


…うん、スカートと靴下の間が、完全に後ろの階段を透けちゃってんれすよね、これが。それ見てやっと、本当に噂のユーレイはいたんらなあって、実感したわけで。







「…だから最近、音楽室方面行かないの。」

「うるせー根暗メガネ!いっぺん一人で行ってみりゃいいびょん!!」

「いやいや、懸命な判断だと思うよ。」



でも、あのユーレイの本性知ってて、あんな普通に話してられる巴さんを頼もしいと思った反面、実はちょびっとだけ引いたのは、絶対内緒だびょん。







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