「何このご飯…!」

「久し振りに姫で炊いたんですけど、どうですかね。ちゃんと炊けてます?」

「ちゃんとどころか何なのこの甘さ!!今まで食べた姫飯の中で一番甘い…!さっきお米研いだ後に何か入れてたけど、あれ!?」

「そうですよー、蜂蜜です。」

「蜂蜜!?あんな貴重なもんどっから手に入れたのさ!」

「南蛮ですよ。味はピンきりですけど、ここより収穫量が多いので、少しは手に入れやすいんです。」

「うっそ!それ売って!!」

「大事な商売道具ですからお断りします。っていうか、随分炊事に感心あるんですねえ。忍の方だって聞きましたけど。」

「俺様優秀な忍だからさー戦に諜報に裁縫炊事洗濯掃除なんでも任されちゃうんだよねー。」

「…お疲れ様です…。」

「やめて本気で同情するの。自分で言っといてあれだけどすごいやるせない。」

「家事マスターな色男なんて滅多にいないですよーわー素敵ー。」

「棒読みだし南蛮語混じってるけど、お気遣いどーも。」

「藤次郎さんと真田さんはお仕事中ですか?」

「仕事っていうか手合わせ中。ほんと二人とも好きだよね。」

「ああ、さっきから聞こえてるこの爆音はそれですか。」

「そういうこと。」

「従者さんは行かなくて大丈夫なんですか?」

「大丈夫大丈夫。っていうか普通に行きたくないよね。とばっちり受けたくないから。」

「真田さんも強そうでしたもんねえ。」

「うちの旦那の分まで夕餉作ってもらってありがとねー。でも実は旦那、甘味を期待してたんだけど。」

「はい、ご飯冷ましてる今の内に作るのでご安心を。」

「…って言いながらゴボウを手に取るのはなんで?」

「ゴボウのケーキ…えーと、南蛮菓子作るんです。」

「ゴボウで菓子…!?それ美味しいの…?」

「片倉さんもひいてましたねえ。まあ、出来てみてからのお楽しみってことで。」

「へえ〜…じゃあ、とりあえず期待してる。ところで巴ちゃんはお菓子作り学びに南蛮に渡ってたの?」

「いえ、ちょっと人攫いに捕まってしまって。」

「それちょっとって程度じゃないよね!?」

「あ、そうですね。まあそんなわけで、舟に乗せられてどこかに売られる前に嵐で舟が難波しちゃって。運良く明の沿岸に流れ着いたんです。」

「それって奇跡的じゃない。九死に一生を得たの具現化だよ。」

「ですよね、よく言われます。まあその後、そこで拾って頂いた方と一緒に色んな国を旅して、最終的に何とかこっちに…辿り着いたんですよ。」

「へえ〜無事に帰って来れてよかったねえ。で、昔生き別れたお兄ちゃん探してるってわけか。」

「はい。攫われた時に一緒だったんですけど、兄は何とか舟に乗せられる前に逃げられたので。」

「似たような顔したって言ってたけど、そんなに似てるの?」

「変わってなければ顔は同じですよ。双子ですから。」

「あ、そうなんだ。」

「もし見かけた時はよろしく伝えて下さい。」

「りょーかい。さっき竜の旦那にも頼まれたしね。」

「藤次郎さんには本当によくしてもらってます。」

「ねえ、いくら興味のある南蛮に行ってきた子だからって、城の廚を一人で使わせちゃうんだから。」

「ですねえ。ご期待に沿えるものを作れるといいんですが。」

「この姫飯だけでも充分でしょ…って言った傍からなんでご飯炒ろうとしてるの!?もうそれに塩かけて握っただけで最高なのに!!」

「戦の時ならそれでいいかもですけど、流石に普通の夕餉でおにぎりだけって城主に対して駄目じゃないですか?」

「ええええ…ちょっと、本当に炒めちゃうの?うわ、信じらんねー。え?その煮物の汁も使うの?今何入れたのさ、その黄色いの。」

「これはバター…動物の乳からできた油です。風味がいいんですよ。」

「へー…これ炒めた後、元より美味しくなくなってたら俺様怒るからね?」

「えええ、どうだろう、好みあるかもしれないですけど…。じゃあはい、味見どうぞ。」

「うわっくそ、美味しい。」

「あ、何よりでした。それじゃあ次は…」

「ちょっと待って信じらんない!そのばたーってやつも売って!」

「作るのが大変なのでお断りします。」

「お手伝いするから!」

「いいですよ、あたし手際悪いですし、お忙しそうな人を手伝わせられません。毒味して下さるだけで充分です。」

「…あはー、毒味って気付いてたの?」

「大事な人を心配する気持ちは、嫌と言うほど分かります。納得いくまで毒味して下さい。その方が、あたしも安心して出せますから。」

「…お言葉に甘えまして、ってね。」

「はい。」

「……。」

「……。」

「あ、そういえばまだ名乗ってなかったや。俺様佐助ね。猿飛佐助。」

「猿さ…猿飛さん。」

「今猿さんって言おうとしたよね?」

「すみません、最初に猿って聞いてしまったので、頭の中だとずっと猿さんって呼んでました。」

「もー止めてよね。蜂蜜とばたー分けてくれたら許してあげるけど。」

「あたしは巴と言います。」

「さらっと流さないでくれる?」

「約束してしまいましたから、その内上田にもお邪魔します。迷惑はかけないよう努めますので、その時はよろしくお願いしますね。」

「…はーい。」







変な子。









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