「す、好きじゃないし別に!!」
「またまた」
「もう!!ネイサン!!」
そう言うとネイサンはウインクをしながらそう照れなさんな、と言った。
最近女子組の間では私がバーナビーの事が好きらしいとの噂が流れているみたいで、今日もネイサンにそのネタでいじられる。
「違うって言ってるのに!」
「アンタ分かりやすすぎるのよ。あのハンサムばっかり目で追っちゃって」
そう指摘されてかぁと顔が赤くなる。しまった、私ってば無意識に……ってちがぁあああう!!
「好きじゃないの!」
「はいはい」
そう言ってネイサンは私の言葉を流した!むきー!
するとシュッとトレーニングルームのドアがスライドして、タイガーとバーナビーが現れた。ぎゃあ!
思わずネイサンの影に隠れる。
「おおファイアーエンブレム!……と名前?何してんだお前」
「複雑なお年頃なのよ」
ちらりと影から二人を覗く。
タイガーとバーナビーは不思議そうに私を見ていた。う、うう。恥ずかしい。
「ほら、出てらっしゃいな」
「うー……」
おずおずと私はネイサンの影から出る。
「なんか悩み事か?」
「ううん、別に……」
「なんなら相談に乗りますよ」
バーナビーに言われた瞬間、顔がかぁっと赤くなって胸がどきどきする。口からは「あっ」や「えっと」などと途切れ途切れの言葉が漏れる。
「?名前さん?」
「なっ、何にもないのー!!」
居たたまれなくなって私はトレーニングルームから逃げ出した。
背後に視線いっぱい感じるけどもうなんかいいや!
「どうしたんでしょうね、名前さん」
「んもう、鈍いわねーハンサムも!」
「全くだバニー。で、何がだファイアーエンブレム?」
「あんたもよ。ちょっと、ハンサム!」
「はい?」
トレーニングルーム外にあるベンチに深く腰掛けて溜め息をついた。手の甲で頬に触れてみる。まだ暖かさが残っている。
ああこんなんじゃこれからヒーロー業やってけないんじゃないかしら。バーナビーを見る度にこんなに胸が苦しくなって、彼以外何も考えられなくなってしまう。
どうしたものか、とまた深く溜め息をつく。すると。
「大丈夫です?」
「バーナビー!?」
これは噂をすればなんとやら!?
私は慌ててだらけてた姿勢を直し、少しぐしゃっとした髪に手櫛を通した。
「隣いいですか?」
「ど、どうぞ……」
私の左隣にバーナビーが座る。
私はなるべく離れるように端に寄った。
「ちょっと何で離れてくんですか」
「あっ、いやその…あははー…」
まともにバーナビーの顔を見ることさえ出来ない。だってこんなに距離が近い!手を伸ばせば届く距離だ。こんなに近付いたことは今までにない。
「名前さん、僕不安だったんです」
「……?」
「僕は名前さんに嫌われてるんじゃないかって」
思わずバーナビーを見ると、彼は困ったように微笑んだ。
「そ、そんなことないよ!私、バーナビーのこと……」
言いかけて止まる。何告白紛いのことしてんだろ。
すると、ベンチに置いていた私の左手がそっと包まれた。
心臓が跳ね上がる。この大きな手は間違いない、バーナビーのもの。
「あ、あの」
「恥ずかしながら、ファイアーエンブレムに助言を貰ってきまして」
「え」
一瞬のことだった。
バーナビーの顔がすぐ近くにあって、唇には柔らかい感触があって。
私は直ぐには理解出来ずに、ただ呆然とするのみ。
ゆっくりバーナビーが離れて行く。唇にまだ感触は残ったまま。
ぎゅ、と左手が握られて私はハッとした。
今の、キス。
身体中の血液が沸騰していくのが分かる。私の顔はきっとトマトに通ずるものがあるだろう。
「僕、ずっと貴女が好きでした」
「えっ!?」
「実はファイアーエンブレムに相談してたりもしたんですよ」
「ええ!?」
じゃあファイアーエンブレムは私達の気持ち、分かってたんだ……。
私の左手が持ち上げられ、そっとバーナビーがキスをする。私の心臓はこれでもか、と言うほどに跳ね上がる。
「名前さんは僕がずっと守ります」
「……私、ヒーローよ」
「ええ、僕もです」
「ぎゃあっ!」
そのまま腕を引かれ、私は上半身をバーナビーにぎゅうと抱き締められた。
「ぎゃあって……もっと可愛い悲鳴上げて下さいよ」
「む、無理ー!」
恥ずかしくなってぐっとバーナビーの胸に顔を埋める。
頭の処理が追いつかないほどに幸せなんて、初めて。
こっそりと微笑むと、なまえさんと優しく名を呼ばれる。
顔を上げると、またバーナビーの顔が近くにあった。
「愛してますよ」
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素敵企画、「母星」様に提出!
ありがとうございました!