パターン2 <クラピカ氏の場合>
「まず謝ろう。正当な手順も踏まずに、こうした結果となってしまったのはひとえに私の不手際だといっていい。時系列的にまず私で間違いないだろう。責任逃れをするつもりは毛頭ないがこういう事は明確にしておくべきだ」
「はあ⋯⋯」
(何わけの分からない事を長々とくっちゃべってるのかしら)
「復讐劇に身を投じ、同胞を取り戻す為とはいえ後暗い業に手を染める私に家庭を築くという行為が許されるのか。その答えは未だに出せはしない。そう、これからの私の人生を考えるうえでの長いテーマになるだろう」
「ええ⋯⋯」
(今日はどこで火が点いたのかなあ⋯、こうなっちゃったら長いんだよなあクラピカって)
「人知れず天涯孤独に死んでいく、それが私にとっての贖罪だと。長らくそう思っていた。しかし私とて子を授かり人の父となるのには吝かでない。寧ろ君とクルタの血を残せる事に強い喜びすら感じる」
「そう⋯⋯」
(どうでもいいけど舌噛まないのかしら)
「女の子か男の子かはまだわからないが、どちらでもきっと君に似て可愛らしい。私の故郷では女の子であれば花を男の子であれば木の葉を、生後間もない赤ん坊の枕元に飾るんだ。健やかに育つようにと願いを込めてね」
「うん⋯⋯」
(今日のご飯何にしようかな)
「順序が逆になってしまったが、君には正式に結婚を申し込もうと思う。友人を呼んでささやかな式も挙げよう。そして、今一度皆の前で誓おう。今後、何があろうとも私は君と共に歩むと」
「⋯⋯⋯⋯」
(あ⋯⋯流れ星⋯⋯きれい)
席を立とうとすれば足に鎖は巻き付くわ、緋の眼は発動されるわで身じろぎ一つできない。
帰ろうと思っても帰れないので。
そのうちナマエは考えるのをやめた。