耳に障るほどの雑音。鼻につく臭い。口が粘つきそうな空気。溢れかえる人間の気配。
 どれも馴染みがなくて、とても馴染み深いものだ。
「……どこだ、ここ」
 自分の口から出た声は、いつも通りの低さでもって雑踏に落ちる。
 さり気なく辺りを観察すれば、覚えのある雰囲気の街並みが広がっていた。
 周囲の人間たちは、ほとんどが洋装で武器を携帯している風でもない。2205年の外の世界を見たことはないから判断がつかないが、どうにも私が知っている年代のように思える。
 つまり、2000年代前半ということだ。
 ショウウィンドウのひとつに目をやれば、いつもの戦装束から草摺と腰巻き、本体を除いたラフな格好の大倶利伽羅が映っている。
 よかった、風呂に入ろうとしていたところで。
この年代の世界でいつもの戦闘スタイルだったら、注目を集めまくったあげく通報されている。
 ここに来る前のことは覚えているし、ゲートの不調を確認する手伝いに呼ばれたことは他の連中も知っている。自分の本体がないのが不安だが、本丸にあるから主たちが自分は生きていることを知れるので良しとしよう。
 それよりも、もう少しこの場所の詳細な年代と位置を把握しておきたい。
「どこかに住所が書いていないか探さないと」
 ずっと一所(ひとところ)に留まっていて不審がられても面倒なので、ゆるゆると歩き出しながら周辺の偵察をしていく。
「は?」
 目にしたそれに、私は間抜けな声をあげてしまった。
 いくらか歩いた先で見つけた電柱につけられた住所を、立ち止まり凝視する。
 米花市米花区米花町。
 いやいやいや。いやいやいやいやいやいや?!
 まって? ねぇ、待って?
 日本のヨハネスブルグ、米花町?!
 あの体は子供、頭脳は大人!な名探偵の?!
 mamami-ya!!
 脳内で頭を抱えて天を仰ぐ。
 これ、なんかのイベントでそういう住所標識をつけてるだけだと思いたい。
 思いたいが、現刀剣男士、前オタクな私の直感が言っている。
 これはイベント用ではないと。
 まず、風雨に晒された感じから標識は最近付けられたものではない。
 そして、イベント特有の空気感というものが感じられない。
 だとしたら、ここは本当に『あの』米花町なのだろうか。
 信じられないが、自分がこうして大倶利伽羅をやっている時点で突飛な現象を信じないというわけにはいかないだろう。
 ああ、だけど、事態を呑み込むには少し時間が掛かりそうだ。
 標識に張り付いてた視線を引っペがし、とにかく一度落ち着こうと私は休める場所を探すことにした。



 少しでも地理を把握しようと入ったビルの展望台で、ふらふらとしている男が目に付いた。
 なんというか場所にそぐわない雰囲気で、ボストンバッグを担いだ男は仕切りに周囲を伺っているように見える。
 単に旅行者か迷子かとも思ったが、それにしては様子が可笑しい。そう偵察値が高いわけではないが、戦うことに特化した刀剣男士の索敵能力がビシビシとそいつのオカシサを私に伝えてくる。
 時間遡行軍……じゃないよな。
 この年代の、しかも名探偵コナンの世界に、時間遡行軍なんて異物がいてたまるか。時代を遡る手段があるわけでもなし。
 一応、何があってもいいように気をつけておこう。
 ターゲティングした男の様子を気配だけで追いながら、ベンチに腰掛けて外を見た。
 このビルの周辺もやはりビルに囲まれていて、どこまでも街並みが続いている。
 大倶利伽羅になる前は、当たり前のように見ていた景色とそっくりだ。だが、大倶利伽羅になってからは見たことのない世界である。
 なにせ、我が主の本丸はカスタムなしの純和風。行くのは時代を遡った先で、一番近代が幕末ときた。
 超高層ビルなんてあるはずもない。
 あー、空が近い。けど、いつも目にしている空よりも濁っている。
「にかの奴、心配してるだろうなぁ」
 いや、してないか?
 あいつなら私だから大丈夫だと思ってそうだ。
 むしろ、顔面蒼白で私の居場所を探してる主と暴走してゲートに飛び込まんとしている伊達組が目に浮かぶ。
 ごめんね、みんな。伊達組(うちのやつら)を頑張って止めてくれ。
 ちなみに、主とはまだ連絡がつかない。
 たぶんここがコナン時空だというのが関係しているのだろうが、連絡が取れないのは心細い。
 霊力と縁は繋がってるから辿ってこれるだろうけど、本丸(あっち)はどうなってるのかなぁ。
「おー! すげぇ! 高ぇ!!」
「わー、遠くまで良く見えるー!」
「あなたたち走ると危ないわよ」
「コナン君と灰原さんも早くおいでよー」
「ったく。しょうがねーな」
 チン、とエレベーターの到着音がして、子供たちの声とバタバタと走る足音に、うっかりチベスナ顔になったが私は悪くない。
 一方的に知ってる名前を耳にして遠い目になっても私に何の非もないはずだ。
 この世界の主人公様と、まさかのエンカウント。しかも少年探偵団付き。
「他のお客の迷惑にならないようにするんじゃぞ」
 と苦笑混じりな老人の声なんて聞いてない。(∩゚д゚)アーアーきこえなーい!
 しかし、ここに主人公一行が現れたとなると、さっきの怪しい男がフラグに思えてくる。
 江戸川コナン行くところ事件が発生する。
 この世界の常識だ。
 彼らには悪いが、事件事故に巻き込まれたくないので早々に立ち去ろう。
 子供たちのおかげでだいぶ賑やかになった展望台から逃走するなら、今このタイミングしかない。
 これでも刀剣男士。それなりに戦局を読むさ。
 隠蔽を駆使しつつベンチから立ち上がり、子供たちと入れ替わるようにエレベーター前へ移動する。
「あッ!」
「チッ」
 危ない! と思うより先に体が反応していた。
 急ぎすぎて足元がお留守になったカチューシャ少女が床とオトモダチになるより早く、片手で掬いあげているのを自覚したのは、体が動いた後だった。
 しかも、左手で。
 ヤバい。
 関わる気など毛頭なかったのになんで自分から接触しちゃうんだ私は。
 ああああ、しかもカチューシャ少女ってば動き止めてるし。これ転びそうになってビックリしただけじゃないだろう。
 ぜったい受け止めた腕の刺青にビビってる。
 そっと体勢を直してやり、腕を離す。
「あまりはしゃぐな」
「あ、ご、ごめんなさい」
 びくびくと見上げてくる大きな目が潤んでいる。
 はい、怖がられてます。
 大丈夫ですよー。刺青してるけど恐くないよー。私、悪いお兄さんじゃないよー。
「歩美、大丈夫かー?!」
「歩美ちゃん、平気ですか?!」
 おにぎり小僧と三白眼坊やがカチューシャ少女を心配して寄ってくる。
 眼鏡少年とウェーブ少女もだ。
 ここはさっさと退散するに限る。
「怪我はないな?」
「うん、大丈夫」
「なら、いい。だが気をつけろ」
 怪我がないことを確認して、彼女らから離れた。去り際、短刀たちにするように頭を撫でてしまったが気にしてはいけない。
 下行きのボタンを押してエレベーターが来るのを待つ。が。
「?」
 なんだ? 空気が変わった?
 子供たちは、変わらず景色に夢中になっている。
 くそっ、こんなとき短刀や脇差の子達なら偵察も容易いだろうに。
 気のせいならいい。人の世のことに必要以上の介入もする気は無い。だが、私がここに来てしまったように、もしもあの穢刀どもが現れたのならマズいどころの話じゃない。
 どこだ?
 じわりと不穏な気配がする方へ、慎重に足を進めていく。
 あのマークはトイレか。
 トイレとか、嫌な予感しかしないんですけど。



 トイレの入口を開けた途端、腥い臭いが漂う。どうやら予想が的中したらしい。
 中に踏み込めば、いくつか並んだ個室のひとつから血が流れていた。
 開け放たれたままの個室のドアの向こうは惨劇だった。
 便器に凭れ掛かるように座り込んでいるのは、若い男のようだ。目を見開いたまま、苦悶の表情を浮かべ絶命している。
 滅多刺しにされているせいで血が周囲の壁にまで飛び散っていた。おかげで血の臭いが凄い。
 一撃で首を跳ねればいいものを……と、そこまで考えて、いやいやこの時代の人間はそうそう首落とさないと思い直す。
 私ってば、感覚がすっかり刀剣男士になってるな。
 死体を前にしてもビックリして悲鳴上げたりしないあたりとかね。戦場でガンガン敵を切り伏せている身としては、人間の死体のひとつやふたつ大したものではない。
 しかしこれ、どうしたものか。
 明らかに死んでるから救急車を呼んでも意味ないし、となれば警察? だけど、通信機器を持っていないから今すぐは無理か。
 今更だけど悲鳴でも上げてみるか?
 ……悲鳴ってどうやって上げればいいんだろう。
 意図的に上げようとするとどうしていいか、わからなくなるよね。
 そんなことを呑気に考えていたせいか、自分以外の誰かがトイレに入ってきていたことに気がついたのは「ヒッ」と息を呑む音を聞いてからだった。
 あ、まずい。と思ったところで遅い。
「うわああああっ!」
 思わず遠い目になって、後からやってきた男の悲鳴を聞いていた。
 それからは早かった。
 悲鳴を聞きつけてやってきた蝶ネクタイの眼鏡ボウヤが周囲の人間に指示を飛ばす。
 警察への連絡。現場の保存。この展望台に居た人間へその場に留まるように。
 流れるようなそれに、普通の小学生にそんなこと出来るわけないだろう……と塩っぱい気持ちのまま、小学生の指示に従いトイレから展望台へ移動する。
 通報から十数分で警察がやってきたときには、さすがに対応が早いなと思った。
「警視庁の目暮です」
「高木です」
 これまた人間やってたときにマンガとアニメで見覚えのある二人が、警察手帳を見せながら名乗った。
 こういう状況でなければ、本物見れるとかやったね! と思うんだろうが、いかんせん今の私の状況はよろしくない。
「早速ですが、被害者を発見したときの状況をお聞きしたいのですが」
 目暮警部がそう切り出し、最初に喋り出したのは悲鳴を上げた男だ。
「ちょっと腹具合が良くなくて、トイレに行ったらそこの青年が入口のところに突っ立ってて、邪魔だなあと思いながら中に入ったんです。そしたら、床が赤くて…個室の中で被害者が血塗れになってて、俺、悲鳴を上げて……」
「僕たちがその悲鳴を聞いてトイレに見に行ったんだよ」
 ひょこん、と擬音がつきそうな仕草で蝶ネクタイ眼鏡くんが目暮警部に告げる。
 二人の「また君か」は聞かなかったことにしよう。
「僕がトイレに着いたときは、そこのお兄さんと悲鳴を上げたっていうおじさんしかいなかったよ」
 子供の指がこちらを指差し、目暮警部と高木刑事の目が鋭くこちらを捉える。
「貴方が第一発見者ということですかな?」
「……そうなるな」
「ええっと、お名前を伺ってもよろしいですか」
 よろしくないです!!
 そうだよね! 第一発見者でも、容疑者で事情聴取されるなら名前聞かれますよねーっ!!!
 ええっとどうしようかな?! 当然、大倶利伽羅だとは名乗れない。明らかに人名じゃないし、何言ってんだこいつって思われる。
 なにか、なにかないか?!
 元腐女子だった脳みそをフル回転させて、そういえば現パロでよく使われる名前があったことを思い出す。
 オーケー、それでいこう!!
 脳内でみっちゃんがサムズアップしてくれた。
「相州廣光だ」
 はい、相州伝の廣光さんです。
 まさか現パロで使用される名前を自分が名乗ることになるとは思わなかったですけどねッ。
「被害者を発見した時のこと、詳しくお聞かせ願えますか」
「そう話すことはない。トイレにいったら血腥い臭いがしていて、覗き込んだら被害者の男が滅多刺しになっていた。そこにその男が来て、悲鳴を上げた。あとはそこの眼鏡の子供に言われて、この展望台で大人しくしていた」
 真実を端的に話したら、警察二人の目が「こいつ怪しいな」と光り出したんだが……どうしたものか。
「ねぇ、滅多刺しにされてたって、どうしてわかったの?」
 足元で眼鏡少年……面倒くさいな。もう確定だしコナンくんでいいか。コナンくんが子供の無邪気さ前面に押し出した声色で尋ねてくる。
 どうしてと言われてもなぁ…感覚で、としか言えないんだが。
「首を落とした訳でもないのに血が飛び散りすぎていた。一突きしかしていなければ、あそこまで四方八方に血は飛ばないだろう」
「じゃあ、最初に発見して悲鳴を上げたりしなかったのは?」
「吃驚していた」
「びっくり」
「ああ、吃驚していた」
「びっくりしていたのに、死体の様子は良く見ていたんだ?」
 くっそ、面倒くさいな。
 いや、事件解決するために怪しいところを突っ込んでくるのはわかるが、これ私が疑われているってことじゃないですか。やだー。
「別に見ようとして見ていたわけじゃない」
「ええっと、それじゃあ貴方が被害者を発見してから彼がやってくるまでどのくらい時間がありましたか?」
 今度は高木刑事が聞いてくる。
「わからん」
「わからないって……大体でいいんで、何分くらいとかは」
「時間を確認できるものを持っていない」
「え?! 時計とか携帯電話とか、持ってないんですか?!」
 ちょっと高木刑事、その有り得ない! って顔やめてくれませんかね。コナンくんも。
 それに時間なら、そこの子供たちが展望台に来たのと入れ替わりでトイレに向かったから、眼鏡のボウヤなら何分経ったかくらい分かるんじゃないかな。
「大体、俺を疑っているならお門違いだ。被害者とは面識はないし、ここには初めて来たからな」
 私以外に、他にも怪しいやつはいるんじゃないのか。ほら、ボストンバッグの男とか。
 ……って、おや?
 ぐるり、と展望台を見回すがお目当ての人物がいない。
「おい」
 足元で何やら考え始めていたコナンくんに声を掛ける。
「ボストンバッグの男は見なかったか」
「え?」
「髭面の、ボストンバッグを担いだ、周囲を気にしていた男だ」
 私に言われてコナンくんが展望台にいる人間を確認する。
 事件が発覚してからすぐに誰もここから出ないように指示を飛ばしていたし、エレベーターは子供たちが見張りに立っていた。
 発覚する前にいなくなっている可能性はあるが、私がトイレへ移動するまでは別の階に移動していないはずだ。
 コナンくんが子供たちにボストンバッグの男のことを聞けば、「そういえば僕達がここに来た時にいましたね」と光彦くんが言った。
「そいつエレベーターに乗ったか?」
「いいえ。エレベーターは誰も使っていないわ」
 哀ちゃんがエレベーターの使用を否定して、それじゃあその男はどこにいったんだ……とコナンくんが唸る。
 うんうん、これで私以外の怪しい人物に目を向けられたことだし、あとは頼んだ名探偵くん。



 斯くして、名探偵のおかげでトリックは解明し、犯人は特定された。
 ぶっちゃけトリックとか、名探偵くんの解説を聞いたところで「へぇ、そうなのか。すごいな」以外の感想を持てなかった残念な頭の持ち主なので、彼の推理ショーは右から左へ流れていったけれど。
 とりあえず、私の後に来て悲鳴を上げた男が実はボストンバッグの男と同一人物だったことには驚いたが。
 無事に犯人が分かり、あとは犯人が心情を語って、はてさてこれにて幕引きでござい……にはならなかった。
 名探偵の推理ショーでトリックと共に動機を暴かれたことに激昴した男が、刃物を手に子供たちの方へ走りだす。
 男がそんな行動に出ると思わなかったのだろう。目暮警部と高木刑事が驚きの声を上げて出遅れる。名探偵が慌てて阿笠博士の後ろから飛び出す。
 が、それよりも私が動く方が早かった。
 男と子供たちの間に身を踊らせ、一歩踏み込む。大倶利伽羅(本体)がないから、奮うのは己の手足だけ。
「見え見えだ」
 男の手にしているナイフなど、日本刀の付喪神からしてみれば大した脅威ではない。自棄になって真っ直ぐに突っ込んでくるだけの人間を制圧するには一瞬で充分だった。
 刀剣男士の身体能力舐めるなよ。
「フン、こんなものか」
 武器を無効化して床に転がせば、身動ぎすら出来ない男の一丁上がりである。
 それより、さっさと脳みそ切り換えて動いてくれませんかね刑事さん。
 ポカンと間抜けに口を開け呆気に取られている高木刑事に「おい」と声を掛ける。
「あ、はい、なんでしょう?」
 なんでしょう、じゃないでしょう。
「いつまで俺にこうさせておくつもりだ」
「あ!」
 大丈夫かな、この世界の警察……。
 私に言われてようやく思い出したように動き出し、高木刑事が犯人の男に手錠を掛ける。
 手錠を掛けられ、ぐずぐずと啜り泣き始めた犯人から離れると、子供たちがばたばたと駆け寄ってくる。
「にーちゃんスゲェな!!」
「お兄さん、格好良かったー!」
「格好良かったです!!」
 目の前には興奮に目を輝かせた子供たち。
 純粋に褒められて悪い気はしない。この子たちの賞賛は、主さんから貰う誉と同じくらい嬉しかった。
「これくらい造作もないな」
 まあ、本丸以外ではちゃんと大倶利伽羅するように頑張っているので、口から出るのは可愛げのないセリフなんですけどね。
「廣光さんって武道か何かやってるの?」
「それなりには」
「空手? じゃないよね。蘭ねえちゃんの形とは違うみたいだし」
 そうなん?
 そういう武道のあれこれについてはあまり詳しくないけど、空手もなんとか流、って流派があった覚えがあるんだけど。剣術と同じで流派によって形が違うとかあるんじゃないかな。
 まあ、私のは確かに空手じゃないけども。
「刀を扱っているが、無くても戦える程度には鍛えている」
「じゃあ廣光お兄さんは剣術家?」
「それでいい」
 それにしてもこの名探偵くん、顔に出やすいな。それでいいってなんだよって顔してらっしゃる。
 でもなぁ……刀剣男士です、なんて言ってもわからないだろうからね。こっちも説明のしようがないし。
 と、そうだ。刑事さんたちに聞こうと思ってたけど、子供たちの方が知ってそうだし今のうちに聞いておこう。
「ところで、この近くに大きめの公園はあるか?」
「公園ならあるけど」
 コナンくんの目がすっと細められる。
 なんでいきなり公園の場所を聞かれたのか、私の真意を読み解こうとしている目だ。
 残念ながら名探偵くんが満足するような謎も真意も私は持ち合わせていない。
 正直に言えば寝床がないからです。本当に口に出しては言わないけどっ。
「どこか教えてもらえるか」
「公園なら私たちが案内してあげる!」
 きゅっ、と私の左手を握って歩美ちゃんが名乗りを上げた。
「お、そうだな! オレたちで案内しよーぜ!」
「いいですね! お兄さんには助けてもらいましたし、恩返しさせてください!」
「ちょっ、おい?!」
 それに賛同するのは光彦くんと元太くんだ。
 こちらの正体が掴めていないと警戒しているコナンくんと哀ちゃんは、止めたいけど明確に止める理由がないといったところか。
 まあ、公園の場所教えて。案内してあげる。のやりとりでコイツ怪しいからやめておけ、とは言い出せまい。
 ちらちらと子供たちと、私と、まだ現場に残っている警察の面々にと、視線がうろつきまくっている。
 私としては出来れば案内が欲しいけど、その後公園でどうするのか聞かれても困る。
「案内は必要ない。場所だけ教えてくれ」
 ほっとした様子の頭脳は大人組と拒否されて肩を落としてるマジお子様組、どっちもすまんね。






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