20100709の詩【BSR】
2011/10/19 12:48

 遠雷が鳴るソラの下、僕はうっそりと息を吐き出した。
「聞きたいんだけれどね、政宗くん。なんで僕が、こんな場所に、連れてこられなきゃいけないのかな」
 スタッカートを効かせるように、文脈を切って、左隣に並ぶこの国の主へ言葉を投げつける。
 国の主と言っても、王ではない。
 日本の過去、戦国時代に似て非なる世界。その世界の奥州を束ねる男が、いま僕の隣にいる青いので。独眼竜と呼ばれた英傑、伊達政宗だ。
 初めてその名前を聞いたときは、度肝を抜かれた。タイムスリップなんて信じられないことが起こったと思ったから。それからしばらくしてタイムスリップではなく、トリップだと知ったときは笑うしかなかったけれど。
 国主である政宗を挟んだ向こう側にいる彼の側近は、只でさえ強面だというのに眉間に不機嫌なクレバスを多量に生み出し、その顔の迫力を増加させていた。もっとも、強面といえば僕の世界での知り合いも彼に負けず劣らず強面だったし、それなりにヤバイ方面に通じていたので片倉から染み出している怒気もそう恐がるようなものではない。それに言葉を投げられた当の本人が気にした様子もないので、その側仕えである男の気分がどうであろうが僕には興味がなかった。
「Ah-n? 世話する代わりに俺に付き合うって言っただろうが」
 ニヤリと口端を吊り上げて政宗が笑う。
 きっと僕がさっきの言葉を吐き出すことを予想していたのだろう。
 次に僕が吐き出す言葉も当たりを付けているに違いない。
「僕は衣食住を提供して貰う代わりに、僕の識る詩と異国語を教えると言ったはずだよ。こんな今にも降り出しそうな空の下で、物々しい行列に参加するのは入っていないんだけど」
 物々しいというか、軍列だ。命を狩りに往くための行列。
 胸に過ぎったのは戦場を駆ける白銀の騎士と、戦火に翻弄され争いを憎んだ少女の詩。

 血が流れるのは好きではない。痛みと悼みしか生みださない。
「確かにな。だが、今のアンタはうちの人間も同様だ。そうだろう?」
「同様、とは言えないと思うけど。いまの僕は居候みたいなものだからね。まさか僕に争いに参加しろなどと言い出すつもりじゃないだろうね?」
「まさか! アンタが戦に向いてないのは百も承知だ」
 だったら何故、と続けるまえに政宗は浮かべた笑みを益々凶悪な、いや凶悪に見えるだけで実際は玩具で遊びたくてしようのない子供みたいな笑みにして、僕を見遣った。遊ばれる玩具であるところの僕は、全身の疲労を乗せた息を吐き出して、片倉へと視線をやる。
 僕の態度に従者の鑑な片倉は、しかし自分の主の無茶振りを解っているのだろう。どこか憐憫の眼差しを向けられた。
「なぁ、」
「何かな、政宗くん」
「アンタは詩を観るんだろう? 地平線とやらの、いくつもの歴史を。だったら、此処の歴史を俺達の戦いも『詩』として観ていろ。そんでもって俺達の詩をアンタが歌え」








会社のパソコン内を整理してたら出てきた戦国BASARAの話。思いっきりSHKネタ。続きません。
タイトルはファイルのタイムスタンプ。つまり書いたのは去年で1年PC内にあったことに…。



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