誕生日プレゼント
「……何してんだ?」
「お正月だし七輪でお餅焼いてみたくて。自分の誕生日プレゼントに通販で買っちゃった」
ガラス窓がカラカラと音を立てて滑れば、頭上から声が降り注ぐ。振り向けば陣平君がタバコを咥えながら、怪訝そうな目で火鉢を見詰めていた。
「また妙なモン買いやがって……」
「美味しいお餅、食べたいじゃん」
私は彼に笑いかけると、七輪の上に網を乗せて火箸で炭の位置を調整する。それから、用意していたアルミホイルを巻いた餅を置いた。じわっと広がる熱気に、思わず口元が緩む。そろそろかな、と思ったタイミングで火箸を持ち上げて、焼き上がったばかりの餅を引っくり返した。私の行動の一部始終を眺めていた陣平君は小さく溜息をつくと、灰皿にタバコの火元を押し潰し、こちらへ寄って来るなり口を大きく開ける。まるで親鳥の餌を待つ小鳥のようだ。
「もー、しょうがないなぁ」
苦笑しつつ、私が彼の口に一個目の餅を入れてあげると、「んまい」と満足げに咀噛する陣平君。なんだか可愛く思えて、二個目を彼の口に入れてあげた。
「お前の誕生日なのに俺の方が食っちまっていいのかよ」
「うん。今日は自分のしたいことしかしないって決めてたから」
私の言葉に彼は一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに「変な奴」と言って、優しく微笑んでくれた。そして再び大きく口を開けたので、今度は自分で食べるように促す。すると、不満そうに唇を尖らせる彼。私は吹き出しそうになるのを堪えて、まだ焼けていない残りの餅を網の上に乗せた。