「じゃあ、開けるからね……」


ガチャリとあっさり開いた扉。なかは暗く奥まで見えない、あの先になにかあるのか、わからない。オレは後ろを一度振り返って、それからそっと中に入った。まだ目は慣れない、いっそのこと死ぬ気になればその炎で明るく照らすことができるんじゃないかとも思ったけど、それは相手にオレたちの居場所を知らせることになってきけんだって直感した、または――感覚を少し共有している妹が教えてくれたか、のどっちか。もう数秒もすればきっと目は暗さに慣れるから、リボーンとかさ、人識くんと出夢くんなんてもう慣れてしまったんじゃないかな?あたりをキョロキョロしている。オレと獄寺くんも、慣れた……………!?
突然襲ってくる衝撃、威力はそこまで高くないけれど広い範囲で、何回も襲ってくる。


「っく!!」
「……綱吉、もう目は慣れたな?人識とふたりで先に行けよ」
「出夢くん!?」
「最初の作戦通りだろ、ぎゃはは!なあゴクデラくーん?」
「ちってめーが言うんじゃねえよ。てことで十代目、この敵はオレたちに任せてください!!おい、零崎も無傷で助けてこいよ!」
「…!うん……!」
「おうよっ」


立ち止まったふたりを置いてオレたちは駆け出した。よかった、誰か、はオレたちを行かせてくれるみたい、攻撃はこない。右の奥に階段を見つけて、オレたちはそこへ向かって走り出した。だからそこにいた人物を、オレたちが見ることはなかった。


「――匂宮とボンゴレの嵐の守護者か……うん、悪くないな」







「っ意外と広いじゃねーか、この小屋!見た目とあってねーし!」
「小屋っていうか、倉庫みたいに広いね…」


ふたりで走っていくと、……ってふたり!?リボーンはどうしたんだよ、リボーンは!いつの間にかいなかったリボーンを気にするけれど、多分またなにか企んでいるんだろうと結論づけてオレたちは先に向かう。ただなにかの気配がするようになってきたから、ゆっくりと歩いてだ。人識くんも、気づいてる?すっごい《嫌な》というよりは《強い》気配、まるでこちらを征してしまいそうな、《赤い色》ってイメージが頭のなかを駆け巡った。オレはもうグローブ(まだ手袋だけど)をはめて、人識くんはナイフを構えている。立ち止まった、どこ……――上?!
バッ!と音をたてて明かりが一斉につく………ってえぇえええ!!?なにここ、こんなに広いの!絶対外から見た建物と中身違う場所だろ!!ってつっこんでる場合じゃなかった。人識くんはもう上を見つめてる。オレも慌ててそちらを見ると、落下防止のための柵状の手すりに座っている赤い服を着た、真っ赤な女の人がいた。「っこれマジか………!?」と出夢くんが来たときよりずっと苦虫を噛み潰したような表情でつぶやいた。まさかまた……《一周目》とやらの、知り合い?


「よお――殺人鬼くん。わざわざあたしにやられにきたのか?ご苦労様」
「かははっ……冗談キツいぜ、人類最強。オレはいろはちゃんとイチャイチャするために取り返しにきたんだっつーの。んで、いろはちゃんは?あんたらも助けに来た――っつーよりは、あんたの仕業か?」
「御名答!いやあ鋭いねえ零崎くん。鋭いのはナイフだけじゃなかったってことであたしは安心」
「言ってくれるじゃねーか……」
「え、ちょっ待っ!オレにもわかるように会話してよ、あれ誰!?」
「――そのまま人類最強だぞ」
「! リボーン、おまえ……」


いなくなっていたリボーンが、赤い女の人座る手すりの先にちょこんと座っていた。


「《人類最強の請負人》、哀川潤。裏の世界では知っている奴は知っている、いやなぜかその名前が広まることなかったと言えるぞ。まあ誰の仕業かは見当がつくけどな、んでオレや家光…9代目の古い友人だぞ。――てことで久しぶりだな、潤」
「おうおうおひさーリボーン!まあた赤ん坊らしくないことしちゃってるって聞いてんぞ、赤ん坊が家庭教師とかどんなギャグだ。赤ん坊は大人しく寝てろってんだ。そっちが例の綱吉くんかなー?」
「あ、はい!哀川……さん?」
「こら、あたしのことは名字で呼ぶな。呼ぶのは敵だけだ………っていまは敵であってんな」
「え……!?」
「かわいいいろはちゃんを取り返しに来たんだろ?なら――あたしを倒していきな」
「えぇええええ!!?」


リボーンの友人とか、強いに決まってんじゃん!てか人類最強ってどんだけスケールでっかい人なんだよ、あだ名にしても酷いだろ。そういや叫んでばっかりだな、今日。隣の人識くんは……はあ!?元から赤い目がさらに赤いんですけど!だけど顔色は、悪い。そんなに相手が悪いのか――?


「あの子はまあいじめたりもしたけどさ、いまは、まあかわいいかわいい《妹分》なわけだ。だけどボンゴレに巻き込まれたり、殺人鬼くんとか殺し屋くんが側にいて傷つかないっていう保証はないだろ。――いや、このままいくとな、絶対にいつか《なにか》が起こる。だから、あたしが連れていこうってわけ。まだ弱いアンタたちよりはあたしらだったら確実に守れるし、どうだ、異論は?」
「だってそんなの……」


オレたちが原因で、傷つくなんて言われたら少なくともオレはなにも言えないよ。いろはちゃんが友達が傷つくなんて、嫌なんだ。リング戦のときだって怖かった。リボーン、どうしよう。だってリボーンが友人って認めてる人なんだろ?なあ読心術とやらでオレの心ぐらいわかってんだろ。
リボーンを見つめるけれど、リボーンは帽子を深く被ってなんにも言わない。おかしい、だっていろはちゃんはファミリーに巻き込むとかさ、普通に言ってたのにそれでなんにも言わないなんて。……なにか、ある?なんだろう、こうやって考えるのはミオの、妹の担当だから、オレにはちょっと難しいよ。ふたりでひとつ、だからさ。


「………まっ人類最強が言うんだからそうかもしれねーけどよ…とりあえずいろはちゃんは返してもらおうか」
「へえ……あたしに勝つつもりかな、零崎くんは」
「正直いって多分無理。だけどいろはちゃんは取り戻さないといけねーし……―いろはちゃんがそのあとあんたと行きたいっつーんなら考えるだけ考えてやんよ。つまりたとえ勝てなくとも簡単には負けねーよ?」


……そっか、そうだよね。オレはいろはちゃんの気持ちとか考えてなかったよね。あの人はあの人の主観でしか話していない、いろはちゃんはどう思ってるかなんて話してなかった。人識くんって、本当にいろはちゃんのこと、好きなんだなあなんて、へへっ。友達が傷つくのは怖い、だからオレはあのとき戦ったんだ。だったらいまも、人識くんっていう友達が、外ではきっと獄寺くんも出夢くんも戦ってる。これでオレが戦わなくちゃ、リボーンにそれに…ミオに叱られる。それはおれ、本気でへこむから。そーだよな、リボーン。
上をもう一回見たら、リボーンがニッと笑ってくれた。うん、これでよかったんだ。――ズカン、と頭を撃たれた感触。こればっかりは慣れないけどさとりあえず。


「やろう、ひーくん?」
「おうよ、つーくん!」
「いいねえ、そうじゃなくっちゃ面白くないよな!」

人類最強に挑んでみますか。











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