「――依頼だ。標的はボンゴレボス10代目候補。金は口座に前金を振り込んである、成功したら残りを振り込もう」
「ああ、わかったよ」
「周りには《最強のヒットマン》リボーンや守護者たちがいる。戦闘が好きなお前も十分楽しめるはずだ」
「………、《最強》ねえ………ま、いーや。依頼は受けたよ、じゃあ帰るから」


影は、未練なく去っていった。それに笑みを浮かべるのは残された影。――これは間違えることなく、またなにかが始まるプロローグだった。


「いくらぼくがいろいろできても、人の本当の心までは操れないよう?とくにいろはちゃんはぼくのちからなんて簡単にすり抜けていってしまうからね、今回それがよくわかったよう」


リング争奪戦から2日たった日、当然のようにぼくを迎えにきたミオちゃんは開口一番にそういった。また隣に当然のように、ひとしきくんが制服を着て登校しているのはもうつっこむこともできない。ああこれが綱吉くんだったら、それまた当然のように軽くつっこめるんだろうなと考えたことは当然戯言だろう。


「まあつまり何にもしてこなかったわけだけど、またできる限りの小細工だとか準備工作をはじめて、いざというときに備えようってこと」
「いざと言うときって?」
「ま、例えばいままさに起きてることで、今日いろはちゃんの両親が帰って来ちゃうってときかなあ」
「……え、」
「…いろはちゃんの親帰って来ちまうんかよ……」
「そう、だからひーくん流石にいまのままってわけにはいかないっしょ?」
「いやいろはちゃんの親に「いろはちゃんと結婚させてください!」って申し込んでくるから心配ねーよ」
「はは。ダーリン、戯言もほどほどにしないと目つぶすぞ」
「あらやだハニー!そんなことしたらかわいく喘ぐハニーが見れなくなるじゃない!」
「……………ひとしきくん?」
「ちょーしのりました……」


可愛らしい顔をしてるから、女の子の言葉がそこまで気持ち悪くなかったのが問題だと思った。その横でツッコミすらいれずに「ぼくの家でもいいけど流石に定員オーバーかなあ?」とミオちゃんは言う、そりゃああんなに子供を預かっていたら。それよりひとしきくんが「ちょっと間違えて」みんなを殺してしまったら大変だろう。


「よし、とりあえずさ。いろはちゃんの近くのアパートとか帰りには借りれるようにしとくよ」
「おー」
「ひーくんヴァリアーで稼いだお金残ってるっしょ?家はぼくがどーにかしてもう買い取っちゃうけど、生活費は自分でどーにかしてね」
「サンキュなミオちゃん」
「いいえー。ひーくんはいろはちゃんの鏡だからね、それぐらいはしてあげる」
「んでお願いついでなんだけど――」


そのあとこそこそやり出した2人を見て、またとんでもないことでも考えてるのか…、と呆れた目でみていた。……もしもここで会話を聞いていたならば、この結果は変わっていたかもしれない。


ミオちゃんの言う通り両親が帰ってきていて、友達だと紹介した2人とともにひとしきくんの新しい家に移動した(ぼくの家の斜め前のアパートで、けっこういいところだ。それこそ骨董アパートみたいのを借りるんだろうと思っていたから、衝撃を受けた)
そこで「またな、」「明日ねー!」と別れたふたりの口元はやけに笑っていたことも、注意するべきだったのか?










そしていま、いつものように京子ちゃんたちとあいさつをして、綱吉くんにツッコミをうけ、やけにどもっている獄寺くんと話していたら山本くんがたくさん笑ってミオちゃんが英語の辞書を借りにきてにこにことこちらを見てる気がする騒がしい教室で、朝のSHRをはじめたとき、ぼくの思考は止まるしかなかった。


「――今日から転校してきた零崎人識くんだ。みんな仲良くな」
「かははっどーも、よろしく」



並盛の制服をかなり着崩して身にまとい、まだら色の髪を縛らずに笑う――《人間失格》の姿がそこにあった。もちろん視線はぼくと合っていて、そらされることはない。……まさか、やられた。
隣で同じように固まって「なん、で…!?」と呟く綱吉くん、きみの妹のおかげだよ。
「じゃあ席は、沢田の隣なー」
と呑気に席をつげた担任に、ぼくははあ、と息をひとつついた。まったく傑作な出来事だよ。











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