「さあて、行きますか。おにいさんたち」
「ああ。しかし………呂布は撤退してしまったか」
「中央の被害が特に酷いようだからな。人間は流されないとはいえ、不利な戦況にわざわざ残る奴でもあるまい」
「呂布?なんかあるんですかその人」
「いや……だが、とても強い人間だ。だからこそ俺は奴と戦いたいと思う」
「へえー」
「くく、興味なさそうだな」
「当たり前じゃないですかー。どっちが強いとかどうでもいいですし。まったく、男の子っていつの時代もそうなんでしょうかね」
「いいや。俺にもわからない。この戦馬鹿のような人間だけだろうな、わかるのは。俺たちの仲間に似たような奴がもうひとりいるが」
「さすが呉国!あつーい人間が集まってますね!」
「おまえら、そんなに俺が嫌いか…?」


ハルヒに跨がりながら、元親さんと一緒に義経さんに攻撃する。多分、さっきなにも言わなかったお返しでしょう。ぼくに対してなにもないのは、こんな子どもに仕掛けるのは大人げないと思ったのか。……いいよ、もう!子どもにしか見えないって認めてるよ!



「ぼくはこのままハルヒたちと行っちゃいますけど、どうします?」
「…本陣までいけば、置いてきた馬が俺も元親もいるんだがな」
「じゃあ仕方ないですね。――走ってくれる馬がいないなら、自分で走ればいいじゃない。てことで、頑張ってくださ……ってうええ!?」爽やかに去ろうとしたらガシリとふたりに掴まれて、そのままハルヒから落ちる。なにこれ、なんのイジメですか?


《ミオー!?》
「――まあ、待て。そんなひとりだけ楽しようなんて狡いだろう?」
「痛い!地味に痛いよう!実はやっぱり怒ってましたね、さっきの!」
「まさか。子ども相手に怒るほど、大人気ないことはしないさ」
「嘘だ、絶対怒ってるー!含み笑いがすごく恐いもん」
「観念して、俺たちも連れて行けってことだ」
「そ、そんなこと言うならふたりで行ってきてくださいよう……!さすがに三人乗りって無理だし、ぼくいろいろと疲れたんで休んでます。それで、いいでしょう?」
《ええ、ミオ!それ、おれが疲れるんだけど、勘弁してよう!》
「ぼくのちからになってくれるんだよね。ありがとう、ハルヒ」
《うわあああん!我が儘言わないでツキヒに代わってもらえばよかったあ!》
「仕方がないからそれでいい。……子どもはもう、休む時間だ」
「元親さん、子ども扱いするけどぼくはこう見えて15歳なんですからね」
「くく、ほら子どもだ。さて、義経行くか」
「ああ。清盛の首を土産にしてやろう」
「そんなホラーな土産はいりませんって。いってらっしゃい、おにいさんたち」
《ううう、すぐ戻ってくるからあ!》
「うん、ハルヒもいってらっしゃい!」



ハルヒに跨がったふたりを頭の上でまだこっくりと船を漕ぐ子ライオンと一緒に笑って手を振って見送った。
完全に姿が見えなくなるのと同時に、ぺたんとその場に崩れ落ちた。


「ガウー…」
「ああ大丈夫だよう、クーピー。ちょっと、疲れただけだから」


正直行かなくて、良かった。
ともかく鬼の数が多いし、晴れの炎を使うのは、まだ慣れてなくて余計疲れるんだ。きっとハルヒもそれに気づいてて、ぼくを乗せたとしたら本陣にでも連れて行ったんだろう。


「ごめんね、クーピー。きみはぼくに影響されるから、眠くなるくらい疲れたよね。」
「ガウ?…が、う……」
「あー、もしかしておにいさんたちも気づいてたのかなあ?」


だからああやってぼくを行かせなかったとかね。こんなの想像でしかないけれど。
まわりに鬼はもういない。厳島の社は、神さまの加護を取り戻してしまったから。
なら……ちょっとぐらい休んでもいいかなあ。ぼくってば休んでばっかりのキャラになってる気がするけど、いいよね?
勢いよく後ろに倒れこみ、頭にいた白いライオンを胸のまえで抱きかかえると、目を閉じた。戦が終わったころに、赤色のけものは起こしてくれるはず。まだガラシャちゃんたちが頑張ってくれてるかと思うと罪悪感もあるけれど、その分頑張ったから許してほしい。



(意識が消える瞬間、神さまのおやすみって声が聞こえた気がした)





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