社の周りの鬼たちは、ぼくたち3人と一匹にかかればあっという間に倒してしまって。青白いヴィジュアル系のおにいさんがまさか三味線を武器にしたり、鴉のおにいさんが幻のレーザーブレード、またの名をライ○セイバーを取り出したときは驚いた。

本当、この世界の技術ってどうなっているの?戦国時代にライト○イバーってボンゴレ科学班だってびっくりだ。考えれば月英さんの虎戦車だって、この時代ではありえない技術でつくられていた。……本気でぼくだってパソコン作れちゃうんじゃないの?



「次はいよいよ、社だな」
「俺はなんにも出来ないからな」
「言われなくとも分かっているさ。……ミオ、だったな」
「あれ、なまえ………」
「そちらの獣がさっき呼んでいたからな。聞く前に呼ぶのも何だかと思ったが、嬢と呼ぶのも可笑しかったからな」
「ふふ、たしかに。そうです、ぼくはミオといいます」
「良い名だ。本当はゆっくり話したいところだが、残念ながらそんな暇はない。とりあえず今は礼だけ言っておこう。――ありがとう、おまえがいなければきっと辿り着けなかった。俺は元親、長宗我部元親という」



それだけ言って青白いおにいさん、改め元親さんは社のなかに入っていく。
……そんなことない、あなたたちはぼくがいなくたって絶対社に辿りついてたよう。そりゃ時間はもっとかかってただろうけど、きっとあきらめなかったでしょう?
とりあえずうっかりのハルヒを苛めておこうと、隣に座って鼻をつまんでいたらもうひとりの鴉のおにいさんがため息をついて隣に座っていた。


《うがっ、ミオやめて!》
「まったく、いつもあいつはいいとこ取りだ。ミオ、俺は源九郎義経だ。一応元親の……相方みたいなものだ」
「源、九郎義経………みなもとのよしつね!おにいさんが源頼朝の!」
「ああそうだ。随分と知られてるもんだな」
「そりゃあぼくってばすごく未来から来たもの。大抵の人は知ってるけど、」
《……おれ、無視……?》


なんてこった。もはや戦国時代ですらないじゃないか。まさかの源平、鎌倉時代でラ○トセイバー、いやビームサーベルかもしれない。どちらにしても、もう嫌だよう。ああ、オンラインが懐かしい。ぼくのイメージの源義経ってゲームのおにいさんが強く占めてるから違和感が仕事しすぎだし。
よく知らない人から見たら、ぼくは平然と頬杖つきながら座っている女の子だろうけど、実際はまた崖っぷちにいる。つーくんが見たら、すぐに叱られてしまうよう。なんで、なんにも言わなかったんだって。言えなかったなんて言い訳は理不尽にもさせてくれないで、そのあとにぐずぐずに甘やかしてくれるんだ。


「未来、か……。それはどれほどだ?元親たちよりももっと先なのか?」
「もっともーっと先です。多分気の遠くなるくらい未来。義経さんには想像もつかないかも」
「そうか。そこには、ミオのように強い者や今じゃ考えつかないような技術がたくさんあるのか?」
「そうです、ねえ……とりあえず強い人はいっぱいいます。ぼくなんてさっきも言った通り反則技ばかりだから強く見えるだけで、実際は弱いほうですもん。技術に関しては………見たほうが早いかも」


久しぶりに使う、弾の使い切った銃を取り出してくるくると弄ぶ。


「それは?」
「全自動式拳銃、戦国時代でも火縄銃だしこういうのは見たこと無いでしょう?こんな小さくても、撃つとき衝撃は少なくて威力は何倍もあります。………でも」
「っミオ!?」
「だいじょうぶ。弾は、入ってませんよう」


ガチャリと安全装置を外して、焦った義経さんの声に一言かけて。でもそのまま義経さんに銃口を向けて、撃つ。たしかに、弾は入ってないけどね。
弾は入っていないと言ったのに、火を吹いたからそりゃあ驚いただろう。でも、距離なんて無いに等しかったから避ける間もなく黄色の炎は義経さんに当たって、広がった。


「……これは!」
「特別サービスで、治療しておきました。これからまた戦うのに、その怪我じゃあツラいでしょう?」
「礼をいう。しかし、そうならそうと一言ぐらいかけてくれたって、いいんじゃないか?」
「にひひ、おにいさんの驚いた顔が見たかったんですよう。悪戯は成功したみたいですね!」
「…まったく。ならば、元親にも同じようにしてやってくれ。何にも言わずに、な」
「もちろん義経さんも?」
「聞かずとも分かってるだろ?」



人の悪い笑みを浮かべた義経さんに、ぼくも声をたてて笑って隣のハルヒが呆れたように息を吐いた。なんだよう、また鼻をつねるぞ?クーピーを見習っておとなしく……って、寝てるや。


「そういえば、その炎はミオしか使えないのか?それに、その獣も炎を纏っているようだが…」
「いえ、ぼくのいた時代には媒介は必要だったけど扱える人がけっこういましたけど、なんで?」
「いや…実は色は違うがよく似たようなわ…!?」
「な、なに!?」
「―――終わったぞ。龍神は解放させてもらった」


突然の轟音、水の音に思わず耳をふさいで身構えたら響く心地よい声、不適に笑う元親さんがいた。
社の柵の間から下を見れば、その言葉通りに流されていく多くの鬼や人。
………これで、この戦の勝敗もかわる。ゆったりしすぎたから急ごうと思って、でもそういえばとさっきの義経さんとの約束、思い出してさっきの義経さんと同じように焦る元親さんに銃を突きつけた。



(もちろん義経さんは笑って助けなかった)









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