「くそっ、こいつら邪魔だな!」
「こいつらだって俺達を社に向かわせまいと必死なのさ」
「迷惑なことだっ…はあっ!!」


元親とふたり、龍神が奉られているという社に向かっているがはっきり言えば敵が減らん。後ろを援護してくれている孫策と大喬もそちらに手一杯で、これ以上の助けを望めそうもない。


「これでは倒してもキリがない、か……」
「そんな悠長なことを言ってる間に囲まれたぞ?」
「ふっ、万事休す、いわゆる四面楚歌というものか?」
「……いや、それは間違っているな元親。訂正だ。まだ、お前の背中だけは俺が守っているのからな」
「ならば、ふ……お前の背中も俺に預けてもらおうか。義経」
「当然だっ!!」


でもまだ俺たちは諦めていない。いくら相手が大群だろうが、俺はひとりではないからだ。背中を任せられる友がいて、後ろには必死に戦っている仲間がいるのだから。
…ああ、だけど少しだけ…ほんの少しだけ弱音を吐いてよいのならば。いまここで誰か現れてくれればよいのに。そうしたら俺はその者をいまから助けにゆく神なんかよりもよっぽど神だと思うというのに。戦場でこんなこと思うなんて馬鹿だと知っている、かかってきた鬼の腹を斬りつけて、ふ、と笑う。ああもうこんな馬鹿なことを考えているから、こんな幻が見えるのだ。白い狼など、いるわけも、ないのに。



「助けにきました、おにいさん」









「わっ…がふっ!!」
《ずいぶんと色気のない声だなー。口閉じてねえとまた噛んじまうよ》
「うっさいよーハルヒ……ぎゃう!」
《ああほら言ってるそばから。こういうときは、素直に従っとけ。な?》
「はーい………」


横を走るガラシャちゃんを見ると、真剣な目で先を見つめてツキヒに乗っている。なんていうかもう、大人の余裕って奴だよね。あれ、ぼくのほうがすこし年上だった……のか!?
ちょっと悔しくてガラシャちゃんの真似をして前を見つめる。もう戦は始まってからずいぶんと時間が経っているみたいだ。先に転がる死体とそこから漂う嫌な気配がそれを物語っていて、体をぶるりとふるわせた。


《どうする、ハルヒ》
《うーん、まあ別れたほうがぶなん、だよなあ》
《そうだな、それが正解だろう。我はこのまま娘を連れてあちらを守る》
《んじゃあ俺は神さま起こすの手伝いに行ってくんぜー!てことでミオ、方向転換な!》
「へ?……うぎゃぁああああ!!?」
「ミオーっ!」
「が、ガラシャちゃーん!!」
《案ずるな、二手に別れただけだ》
「そうか……ミオー!頑張ってくるのじゃ!!」
「ガラ、シャち……!どうすれば噛まないのー!?」


ぼくの叫びも虚しくふたりとはすっかり離れてしまった。ううう、前回はこんな超スピードでも噛まないですんだのになあ……ずっと死ぬ気だったから?
とりあえず涙目になりながらハルヒにしっかり捕まっていろんな鬼や人たちを飛び越えていく。その途中、飛び越えた人たちのなかになんでかちょっと懐かしさを感じる人がいて。飛び越えるときずっと見つめていたらその人とずっと目があっていて。ああ、この人とは後でまた会えるって直感したから、そのまま未練を断ち切るように前を見つめた。


《ミオ、あそこだ。準備はいいか?》
「違うでしょ、あーゆーれでぃ?ってハルヒが聞いてぼくがいえい!!ってこたえるの」
《それ作品違うから。カプコソのほうだから。しかもなんで舌っ足らず……おれだってちゃんと発音できるし。…まあいいか、余裕ってことだな!》
「Yeah!」
《ははっ…テンション高……!》


ナチュラルハイって奴だよ、はるひくん。口元を笑みに形作りながら、ぼくは額に炎を灯した。足につけてた銀食器たちでとりあえずおなじみのジャックランタンをつくって。ずっとおとなしくしてくれてた子ライオンも炎をあたえて、もとの姿へと戻した。
そしてそのまま。紫色と青色の二人組の元へと突っ込む。


(さて、助けにきたよおにーさんがた!)









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テーマ「人外ファンタジー」
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