―――厳島。
かつて龍神の治める、豊かな神聖な土地であり、今もなお龍の加護が残る地。
そこでは平清盛率いる遠呂智軍と、呉国の主、孫堅の息子である孫権率いる呉軍が対決していた。中央にて呂布の強軍と対し、また一方では源九郎義経と長宗我部元親のふたりが龍神の加護を戻すために進軍し、その後を孫策、大喬が援護する。義経と元親、ふたりの動きが成功か否かでこの戦の勝敗を分ける――と言った緊迫した状況にふたりと2匹は到着した。それがふたつ目の、はじまり。



「これが厳島かあ……ツキヒの言った通りの戦中……緊迫した空気が流れてるねえ……」
「うむ、状況は思ったより悪そうじゃな……しかし!まさか小鳥と話せるとは思っていなかったのじゃ!」
「うんもうファンタジーすぎて言葉も出なかったなあ……」


呉国へと向かっている途中、いきなりツキヒが止まったかと思ったら鳥さんがたくさん飛んできてぴーちくぱーちく。ハルヒに聞けば、ツキヒの愉快な仲間たち、だそうで。白沢っていう存在のツキヒには情報源がたくさんあるんだってね。現代のハッカーであるぼくもびっくりな情報源だ。
それで小鳥さんたちが言うには、呉軍の一部はいま遠呂智軍と交戦中。しかもけっこう苦戦中だとかなんだとか。
「どうする?」って尋ねられたけど答えなんて聞かなくったってわかってたくせにねえ。だっていまぼくたちは厳島を見下ろす崖のうえにたっているんだし。



「嫌な気配がするのじゃ、ミオ」
「うん。だけど……あそこ。あの神社だけ綺麗な空気がある…気がする?」
「……あれは。きっと龍神の社なのじゃ、ミオ。古くからこの地を護って下さっている神様がおわすところのようじゃのう」
《だけどその加護がちょっと失われちまってるなあ…妙な力に抑えられちまってる》
《真白の龍神を抑え、そのうえ操るなどずいぶんとむごいことをするものだ》
「え…龍神ってまさか……」
《あー。ちがうけどそーだよ。平行世界のあの白い龍神ってとこか?》
「む…?へいこうせかい…とはなんのことでございますか?」
《世界はいくつも折り重なっている。あるひとつの分岐点でどれを、どの運命を選ぶのかでそれこそ無数に分かれてしまうぞ。そのなかで囚われた運命の神、だな。…わかったか?》
「もちろん、さっぱりなのじゃ!」
「威張って言われた!……まあ、なんとなくわかったよう。実際にパラレルワールドを体験したこともあるし、ねえ」
「ぱら、れる?また変な言葉が出てきおったのじゃ…」
「えっと平行世界の別称…異国語なんだよう」
「ぱられるわーるど…よし覚えたのじゃ。」
「あ、ガラシャちゃんってクリスチャンなんだっけね」
「そうじゃ。だからミオの話はいつも興味深いのじゃぞ?」


それはうれしいことだねー。よしよし、とガラシャちゃんの頭を撫でて崖のしたに向き直る。さてと、行き先は決まったね。上から見れば、戦場がよく見える。社に向かってる呉国の軍勢……あのふたりを助けにいかなくちゃね。


「……ミオ、龍神さまは苦しみ助けを求めているようなのじゃ…」
「だからなんでわかるの。ってつっこんでもムダだよね……。行こうか、みんな………って?」
《ふふーん!そりゃもう近道だろ!》
《逆さ落としは得意だしな》
「うにゃ、ぎゃっ!!」
「は……あぁあああ!?う、そ…あああ!!」


言うがはやいかハルヒとツキヒは崖のしたに駆け出した。そう、崖に向かって。スプラッシュマウンテンだってびっくりの、直角コースターへご招待!……いらない。









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