ぱたん、と扉を閉めてなかを見つめれば、いつもみたいに羽扇で口元を隠す先生と月英さんがいた。

「失礼します、せんせい」
「はい、待っていましたよミオ」
「はい!挨拶に来ました。あとついでに書状をとりにも!」
「おやおや書状がついでですか」


くすくすと月英さんが笑っている。先生も面白そうに目を細める。
だってぼくにとってみれば、重要な書状よりもふたりに挨拶のほうが大切なんだもん。だからそんなふたりにぼくも笑って、先生の机の前に歩いていく。先生のことだからもうとっくに準備は出来てるんだと思う。あ、机の上のあれがそうかなあ。


「これは呉の孫堅殿へ、こちらは魏国の曹操殿、または曹丕殿へ。あと戦国の方が多く集まる軍では左近殿という方に渡すのが一番よいかと」
「孫堅さま、曹操さま曹丕さま、左近さま、ですね。……はい、覚えました!」
「呉は尚香殿の故郷でもありますから、何の心配もないでしょう。…しかし魏の曹操にだけは気をつけなさい。随分と好色らしいですから」
「好色?」
「女好きってことですよ。二喬という可愛らしい姉妹がいるのだけれど、二喬を手に入れるために戦を起こしたぐらいなんですよ」
「あ、知ってますそれ、赤壁だ」


レッド、クリフ…映画で見たなあ。だけど第2部から先はまだ見てないからちょっといま気がかり。だっていま思えば先生だってたくさん出てるんだよ、かっこいいじゃないか。

「……それなら話は早いですね。気をつけろといいましたが、やはり絶対に近づくのではありませんよ」
「ぷ、く…あは、は…!先生…なんかすっごく……お父さんみたい!」
「おやおや…それは当たり前です。私たちはミオを娘みたいに思っていますからね」
「……前にもこんな会話しませんでしたっけ?」
「そうですか?」
「そうですよう」
「ならばそれぐらい大切に、本当の娘みたいに思ってるってことですから」
「ぼくも……先生たちが本当のお父さんお母さんみたいです」
「それは嬉しいですね。ねえ月英」
「はい、孔明さま。昔からかわいい娘には旅させよと言いますし丁度いいですね」
「ええ」
「どっちかっていうと獅子が子供を谷底に落とす、って感じにぼくは思いますけどね……」


笑顔で笑うふたりに脱力、もうそんなところも大好きです。先生、月英さん!貰った書状をまとめる、どこに入れておこうか、そういえばぼくがこちらに来るときに持っていた鞄を持っていく予定だった。それに入れておこう、なんて思ったりなんだり。ええと呉に魏に戦国のみなさんに……あれ、ひとつ多い?


「えっと姜、維さん……宛?先生これって…」
「はい、前にも話したと思いますがミオの兄弟子にあたる者です。蜀を離れてしばらく立ちますからね、ついでに渡してきてもらいたいのです」
「年もミオと近いから仲良くできるんじゃないかしら?確かいまは魏にいると聞きました」
「魏、ですね!はい、任せておいてください!ちょっと嫌になった魏に行くの楽しみになりましたよう」
「それでも曹操には気をつけるんですよ?」


先生ったら何回も言うなんて過保護だなあ、なんて笑った。さて、明日からしばらく行ってきます。









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