「あ、朱然だ!」
「おーミオ。お前こんなとこで油売ってていーのかよ、準備は?」
「もう終わったよー!なめんな。もともとそんなに荷物なんてないし」

それこそいつも身につけている銃に銀食器にスパナだけでも十分かもしれない。それにふたりのけものたち。食料なんて途中でどうにかなるんだ。我が儘をいうなら一切れのパンってところ?天空の城に向かうときの、必需品だもの。なんてね。
まあとりあえず、ぼくがこの世界にくるときに持ってきた荷物は持っていく予定、それならあまりかさばらないし、ここに置いていってもなんの役にも立たないものだもん。


「しっかし見事に嵌められてたな、お前…」
「だってさー、先生に勝てるわけんだよう!みんなも賛成だったし!」
「…みんな、ねえ……」
「朱然だってあきらめろ!って言ってたよねー」
「ま、オレは、流れに逆らわないからな。ながいものにはまかれろ、いい言葉だろ」
「朱然のばーか!」
「おいこらっ!」


軽くでこぴんされたから、強く仕返ししてやったよ!家庭教師さま直伝だから、威力は高いって知ってるもんね。…こうやって朱然とバカみたいに騒ぐのもしばらくお預けかあ、やっぱりさびしい。


「ま、無理すんじゃねーぞ。大きな怪我とかして帰ってくんなよ」
「……朱然が、いい人になった……死亡フラグがたっちゃった!」
「っておい!ふらぐ?ってやつの意味はわかんねえけど、ろくでもないだろ。縁起でもないこというなよ、最初からオレはいい奴だ!……それにお前が怪我すっと陸遜どのとか太公望殿とかうるさいだろ。あの人たち心配してるからな!」
「えー……朱然は?」
「はあ?」
「朱然は、心配してくれないの?」
「ばっ!?……はあ、心配してねーって思ってるか?」
「ううん。なんだかんだで朱然たら優しいから、心配してくれてると思う!」
「ならそれでいいだろ」
「うーん……でもやっぱりさ、本人から聞きたいと思わない?」


くすくす笑って伝える。ぼくたちはなんだかんだでいい友だちになれた。だから励まされたいのは、当然でしょう?
言わなくても伝わってると思い込むのは、ただの傲慢。やっぱり言葉にされるっていうのがいちばんうれしくて安心できるものなんだよう。だからね、そう伝えたら。


「…いやまてオレ!気のせいだろ、これ!?りくそんどのに、殺られるか…!…」
「しゅぜん?」
「いや、いい。なんにも言うな、言わないでくれ……!」


朱然がいきなりとかぶつぶついきなり呟きはじめた。えええ朱然たら、ひどい!身長差があるため自然に見上げる形でじっと見つめていたら、さらに変な声で叫びだした。朱然、女の子たちが見たらどん引きしちゃうよう?


「朱然?さっきからだいじょーぶ?」
「〜〜と、とりあえず心配してっから!だから!元気に行って帰ってこいよ。無事じゃなかったら、承知しねえ」
「うんっありがとね朱然!」
「………おう」


ちょっと照れてるのか顔が赤い朱然ににひ、と笑っていると「ミオさまー!」と聞こえてきた。振り向けば、りっくんとか朱然の隊の人たちで、ぼくとも交流がある人たちだった。わざわざ、声をかけにきてくれたらしい。
朱然に背を向けて来てくれた人たちに向かったぼくは、もう朱然を意識はしてなくて、朱然が微妙な顔してたなんてもう知らなかった。


(ああもう顔はかわいいんだよな、あいつ!まったく、かわいい悪友……だよ!)









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