「ほら、丁重にいうのですよ」
「はいっ!劉備どの、こたびは助けていただき、感謝の念にたえませぬ!」


遠くでそんな会話がされているのが聞こえてくる。今回助けだされた明智親子が劉備殿に挨拶しているらしい。そしてその娘のようすにあちこちから「かわいらしい」とか「いい子だ…!」とか聞こえてきた。…じっと見守っているのはいいんですけど、ちゃんと仕事してくださいよ、貴方たち。
だけど私がため息をつきたくなるのは、そんな方々に対してではなく。


「か、かわいい…!なんてかわいいんだよーガラシャちゃん」


私の隣で、キラキラとその様子を見ていたミオに対してだった。
思わず呆れたような視線をおくったら、すぐさま気づいてこちらを見てくる。


「どーしたの?」
「どーしたの?じゃありませんよミオ。戦の報告書、ちゃんと書いてくださいね」
「うへー…チェンジで!」
「無理です」
「即答!?なんで意味わかった!」
「さあ?あなたそういうの得意なんだからさっさと終わらせてしまいなさい」


くるくると表情を変えて、だけど楽しそうにカラカラと笑った。ああもう、私にとってはあの子よりもそうやっている貴方のほうがとてもかわいらしく見えるってこと自覚してくださいよ。元々表情は豊かだったけれどこの世界に馴染めたのか、前よりずっと表情を出すようになってそのせいか年齢よりまた幼く感じられるようになった。
目下の敵は太公望、殿。また、朱然みたいに突然現れたミオを警戒して、また嫉んでいた者たちもようやくミオの実力を認めて、逆に想われている、なんてこともある。
まったく気づいていないけれど、元々下の兵たちにはすごく人気なのだ。変に偉ぶらない、親しみやすい少女。そうでなくとも見目がいいから、ミオは人の視線をひきつけて、そのまま惹かれてしまう。なんて厄介なんでしょう。
しゃべり出さない私に「りっくん?」と不思議そうにこちらを見てくる彼女を、手の内に手に入れたくなる。けれどそれにはまだ時期尚早で、きっとそんな無理矢理なことをしたらただ関係がこじれて終わってしまう。
それじゃあ意味がないんです。


「いえ、なんでもありません」
「ふーん?ま、いいや」


笑顔で返したけれど、きっと気づいてしまったでしょうか。聡くて、しかも直感という血統をもつミオなら絶対に。
でもそれを聞くべきではない、とあえて聞かないでいてくれるのは有り難いこと。普通の女性だったらここでさらに突っ込んでそれで自分が特別扱いなのに、そういうことは絶対にない。


「あ、ミオじゃっ!」
「ガラシャちゃん!劉備さまに会ってきたんだね」
「そうじゃ!とても優しいかたでよかった…ん?こちらは誰、でございますか?」
「えっとりっくん…じゃなくて、陸遜っていってぼくと同じで武将兼軍師なんだよう!」
「陸遜どの…でございますか!わらわはガラシャと申しまする、よろしくお願いしますのじゃ!」
「はい、よろしくお願いしますね。ガラシャ殿」
「あーもー!ガラシャちゃんは相変わらずかわいいなあっ!」


……とられた。いつも思うんですが、ミオは女性に優しく、が座右の銘なのでしょうか。くっついてデレデレしすぎです。
しかしこんな女の子に嫉妬してるなんて、とんだ笑い話でしょう。えへへと頬が緩んでるその様子もかわいいなんて。ああもう周りの視線に気づいてください!
どちらかというとガラシャ殿のほうが気づいていますよ。キョロキョロと周りを見渡して、最後に私を見て納得したように頷いている。


「ミオは……」
「ん、なあに?」
「…なんでもないのじゃ。ただ陸遜どのたちが大変じゃな……」
「ガラシャ殿…!」
「ふふ、わかっておりまする!」


はあ…。ミオは「さっそく仲良しになれたねー」とにこにこしているけれど、私はそれどころじゃありませんよ。
とりあえず、報告書のせいにしてふたりを引き剥がしますか。


(それを見て、またガラシャ殿がにやりと笑っていた)









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