「それにしても、妲己の目的は何なのか……、それに清盛の動きも気になるな」
「はい。それにまだ情報が少なすぎて、判断するのは危険すぎます。……どうでしょう殿、ここはひとつ情報収集に乗り出しては」


ミオが術を完成させていたそのころ、劉備と諸葛亮が向き合って話し合っていた。いまだに掴めないそれぞれの思惑と、乱世にさらに嵐を巻き起こす軍団たち。――もちろん平和を願い、軍を指揮する者たちもいるが多くは乱世を楽しみ民を傷つけている。これは特に劉備にとって胸を痛めることにしかならない。
そんななか出された諸葛亮の提案。これがうまくいけば後手にまわらなければいけなかったこの状況を突破できるかもしれない。


「いま手があいていて、確実に成果を挙げれると確信できるのは……星彩殿に忠勝殿のところのお嬢さんでしょう」
「うむ、星彩殿に稲殿か……。若い娘たちに危険に飛び込ませるのは気がひけるが……」
「殿、そんなこと彼女たちの前で言ったら叱られますよ。彼女たちとて無双の武将なんですから」
「そ、そうか…。そうだったな!彼女たちならば成果をあげてくれるだろう」
「指揮は劉禅殿におまかせしても?」
「そうだな。そろそろ指揮をとる力を身につけていってもらわねば。それに翼徳や忠勝殿にだけ子を心配する気持ちを味あわせるわけにはいかないな」


うむ、と頷いて納得している劉備に羽扇で隠しながらひっそうと笑みを浮かべる。いま蜀にいる父親というのは子どもを過保護に思っている気がする。無双の豪傑も子どもの前ではただの人、ということだろうか。


「殿ご心配なく。私の弟子もついていかせる予定ですから」
「弟子……というと、ミオ殿か?」
「はい。多分あの子なら劉禅さまはもちろん、星彩殿たちも全力で守れるような策を出せるはずですから」
「だがまだミオ殿はこちらにきてそれほど経っていないのでは?心配しないのか?」
「私たちはあの子をそれほど弱く、鍛えあげてないですからね。元々頭もいいのか……いえ、そんな言葉じゃすみませんね。特に初陣の後から見せるあの子の軍略は紛れもない、天才です。戦略なども、もはやそこらの軍師など歯が立たないでしょうね」
「そうか!さすがは諸葛亮、そなたの弟子なだけある」
「ふふ、弟子たちが私をいつ抜くのか、楽しみです」


この件について、日頃から劉備が信頼している諸葛亮の言葉を疑う余地がないのか嬉しそうに笑った。本当に息子を心配していたのだろう、子煩悩な人なのかもしれない。


「(まあ…私もひとのことを言えませんかね)」


弟子のことを心配していないかといえば、そんなことはない。いまは修行に出かけていない一番の愛弟子――姜維のことももちろん月英とふたり心配している。飯はきちんと食べているのか、病気をしていないか。
そしてミオははじめての女子の弟子である。少々どこかずれているし、その天才的な頭脳には驚かされるが、とてもかわいらしい弟子は月英も他の弟子たちに加えてよく構っている。
子どものいないふたりにとって他の弟子たちよりもずいぶんと年若く、素直な姜維とミオは子ども同然、いやもうふたりの子どもだった。

――かわいい娘を戦に出したくない気持ちを知るとは。
なんだかくすぐったいようで、不安だが幸せだ。こんなときばかりは遠呂智に感謝してもいいのかもしれない。


「失礼いたしました」と劉備の部屋から退出しながら諸葛亮はぼんやりと思った。









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