とりあえず、ぼくも遠呂智とやらの被害者ということで太公望さん、がお世話になっている蜀という国に行くことに。


「たいちゃん…ハムさん…………望ちゃん、望ちゃん!」
「さっきからなにをいっている」
「望ちゃんのあだ名!だってたいこうぼうって長いんだもん。六文字だよ、六文字!噛んじゃうよ」
「あまり変わっていないではないか」
「いーの!望ちゃん決定!」


(……変な娘だ)


戦場で拾った娘は、劉備将軍や日の本の国のものたちのどちらとも違う服装をしていて、感性も違うらしい。
仙人たる自分をここまで敬わない人間も初めて見た。
隣で先ほど泣いていたのが嘘のようにしている。


「ここ、変に寂しいね。なんにもいないや。せめて鉄くずとか転がってればいーのに」
「なにに使う気だ?」
「さあ?でもとりあえずなんか作る、かな。ものを再生(リサイクル)させるのって得意なんだよう」
「りさ……?」
「あー、言葉が通じるっていっても外来語はわかんないかー。じゃあさ、歌とかもないのかな?」
「……日の本のものだと、今川氏がよくやる短歌のようなものか?」
「ちょーっとちがうよ。もっと簡単で自由に表現できるものなんだよう。こんなかんじにねー



………ららららーらるーら、ら……」



(これは、)


空気が変わった、と思う。娘がいう歌というのは仙界のものに近くて、だけどずっと自由なものだった。仙界のものとも、他国のとも言えない調子の歌だか不思議と耳に馴染んでしまう。
不覚にもこれならばいつまでも聞いていたいと思えるくらいには。


「らーらるらー…………あ」
「どうした??」


突然歌が止まる。なにかを見つけたかのようにこれから我らが通る道をじっと見つめる娘。


「あのね、ここを通らないといけない?」
「まあ、一番の近道であるのだが」
「んじゃあ違う道にしようよ。なんかねーうまく言えないけど……罠があるの」
「罠?」


どういうことだと続きを促すと困ったように話し出した。


「ぼくの家系はちょっと特殊で、超直感っていうのをもってるんだ。見透かす力とかいわれてるらしいけど、ぼくに言わせればただのすごい勘、かな。それがねー、あのへんに敵がいっぱいいるって教えてくれてるの。まるで待ち伏せしてるみたい。ただの勘だけど、ぼくの超直感は外れたことはないから信じていいよう」



笑う少女に驚きを覚える。
ただの迷いこんだ人の子かと思えば、やはりこの世界に呼ばれるだけの力をもっていたのか、と。


「なんか仙人の術で、あのへんにとばせないかな?」
「やってみせよう」


よく使う土人形を呼び出し放つ――――と。


ぞくんっ


大量の殺気とともに放たれる大量の矢や術。あきらかに私に対するものだろう。


女狐がやってくれる…。



「妲己の仕業か……」
「うわ、ヤバかったねー!これからどこ通っていくの?」
「決まっている、このまま突っ切るぞ!」
「へ、あ、うそー?!」

すでに破られた妲己の策のあとなど怖くもなんともない。ゆえにこのまま行くのが早い。
右手に打神鞭、左手にミオを抱えて走る。


(それにしても、よいものを拾ったな)


見透かす力、我が策にきっと役立つだろう、と人知れず笑った。

(あわわわわわ!)(これって……お姫様だっこ!?)












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