正直、修行とかそういうのは向いてない。
それにつーくんみたいにばりばりの超接近戦タイプじゃなくて、後方支援だとか中距離攻撃。相手の隙を見て戦うタイプだとわかっていたから、みんなの相手ができると思えなかった。だからあんたも鍛錬とか参加すんの?なんてしょうちゃんに言われても首を捻ることしかできなかった。
それにいまは学ぶことが多すぎてそんな余裕がない、はず。まったく、それでも鍛練所とかに顔を出すりっくんには脱帽するよう。
ぼくの苦い返事を感じてか、りっくんには望ちゃんや、望ちゃんと一緒にきた仙人さまである左慈さん?に相談してみたらどうですかと言われた。仙人さまは術とかも扱うから丁度いいと。それかせんせいですね、とも。ううん、この様子だと立派な戦闘員とされることもそう遠くないから、そうしたほいがいいかも、なあ……


「ただいまー」

と、言っても返事が返ってくることがないと知ってる部屋に投げかける言葉。わかっているけどもうこれはくせ。いつも賑やかで、誰かしらいる家で育った娘だから。


《ああ、おかえり》
《ずいぶんと遅かったんだなー》
「………はるひ…つきひ…!?」


そこに、夢で会った狼たち、そしてどこに行ったのだろうと思っていた小さな白ライオンもいた。
ぼくの部屋なのになんだか随分くつろいでいる様子で、まったりしているしおかしい。


《言っただろう。我らはお前のそばにいるんだ、と》
《さっそく約束を守りにきたんだぜ。さっきまでは人の子とかがいたし、まあいっかなーって》
「…あは、はは……そんなこといって、適当だよねえ…」
《ハルヒだけだ》
《おい》


態度まで横柄なふたりに呆れを通りこして笑えてくるけど、うれしい。目が覚めてから、やっぱりいなかったとき寂しかったんだよ。…言わないけど。だから言葉には出さないで、ふたりのそばに近づいてその頭を撫でていく。


「やっぱり大きいねえ」
《これでも小さくしたほうだ。本来の我らだと確実に邪魔になるからな》
《ま、これからは俺達の力が必要になるだろー。傍にいねーと意味ねえんだよ》
《情けは無用だ、使えるものは使っていけ。そういうの、得意そうだ》
「……ツキヒはぼくをなんだと思ってんの?」
《我らの主だろう》
「ああ、うん…もういいや」


さすがに狼。これでドがつくSとか言われてたらショックだった。それはぼくじゃなくて家庭教師さまとか風紀委員長とか、隣町の南国果実だって。
………ああそーだ。ベッドに腰掛け狼に隠れるようにいた子ライオンをあらためて、見る。すっかりガウガウと怖じ気づいている、そういうとこナッツに似てるんだから。
ひょい、と素早い手つきで狼たちのもとからライオンをさらう。ぎゅうと抱きしめたら、やっぱり小さくて。身を縮こませたあとに恐る恐るすりよってきた様子は、どこかあの居候たちを思い出させて、かわいらしかった。




「クーピー。あのときはバタバタしててゆっくりできなかったねえ…」
「……ガウ」
「あらためましてはじめまして、なのかもしれないけど。きみ、あのスパナだったんだろ?もうずっと一緒にいたからそんな気しないや」
「ガウ、ガウ………」
「にひ。ボックスアニマルってこういうとき便利だよねー、いつでも一緒にいてくれるし?」
《……それは我らに対する当てつけか、ミオ》
「えー?」
《お、俺だって頑張れば…頑張れば、なあ!》
「ガーウ」
「ほらー、無駄な努力はやめろってクーピーも言ってるよう」
《……うわーん!ツキヒ助けて!!》
《ふん、だが断る!》
《な、んだと………?》
「うわ、こういうの懐かしい」


騒がしい動物たちの声をBGMに、まだ本調子ではない体を休めるため寝所に体をうずめる。腕のなかの白ライオンも、同様に寝るポーズをとって。そうだね今度は一緒におやすみなさいだ、とすぐに意識を飛ばした。



(おやすみなさい、)










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