(いつまで眠り続ければ満足なのだろうか、)


与えられた部屋で3日ほど眠り続けているミオの顔を見つめてはため息をついた。

この3日間、時間を見つけては訪ねてみるが起きる気配はない。それは陸遜や呉の姫たちでも同じようで。左慈によればただ眠っているだけだから心配はいらないというが……それでも心配してしまうのは馬鹿だろう。しかし他の人の子らも同じなのだから馬鹿でも別に良いか、などと考えて苦笑した。


「早く起きないのか……ミオ」


そっとミオの顔にかかる髪をよけながらつぶやいた。なぜかこの3日間は世界がぼんやりと感じられたのだ。もともと人の子にしては白い白いと思っていたが、今はさらに白い。真白だった髪はとうに元の色へと戻った。それでも幼い寝顔をさらす少女は白く見えた。
人の子は弱い。それを知らしめるかのように、この色彩は嘲笑う。

さて、そろそろ行くか。と立ち上がってもう一度だけ少女のほうを振り返れば、ほんの少し瞼がふるえた気がした。気のせい?いや、違う。徐々に徐々に瞼が開いてゆく、琥珀色に近い色がそれと同時に現れていった。あれだけ白かった頬に、だんだんと鮮やかな血の色が表れていく。
目を見開いてしまったのはしょうがない。


「……お、はよーう……望ちゃん」
「……、まったく寝過ぎだぞ?ミオ」

確かにそうだね、とミオは笑う。
はっきりと世界が見えてきた。

「こえ、かす、れてる……う」
「3日も寝ていれば当たり前だろう??」
「うそー……」
「嘘をついてどうになるのだ」


侍女を呼び寄せて水をもってくるように言う。ついでに他のやつらに知らせてやれ、とも。


「あー、うー、のど、いたい」
「すぐに水がくるから待て……あと他の人の子もな。くく、あっという間に騒がしくなるのだろう」
「うれしい、けど、ちょっと、つらいかも」

だって病み上がりだし?と首を傾けてへらりと笑う。そこに侍女が水を持ってきて、手渡す。こくり、と少しずつ口に含みつつ、侍女に礼を言う様子をぼんやりと見つめる。


「あー、あー。回復した??」
「まだ少し、かすれているな」
「これは仕方ないからいいや。しばらくの間だし我慢しよ」



笑うミオにそうだな、と返して同じように笑った。
足音が聞こえてくる、飛び込んでくるまであと10秒…………………5……3…2…1……


(そのとおりにやってきた人の子らにまた笑えてきた)










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