それは、しろ。
神がいる白き場所で、
ふたつの影が舞い降りた。



《へえ、ずいぶんと久しぶりだな。おれたちを呼び出すのは》
《そのおかげでずいぶん退屈していたところだ》
《おれたちはけっきょくはおまえに仕えるもの、遣われなければ意味がないというのに》


「……うん、そうだね。
だけど君たちにこれから大役を与えようと思って」


静かに微笑む白龍。
それとは対照的に、わらうふたつの影。


《それはたいそうめずらしい。いつもいつも選びし神子ばかり頼って我らを使わなかったというのに》
《なら、その役目とやらは、おもしろいもんなんだろうな》
《いいや、きっとあの、いまはまだ弱い娘に関して》
《それはまたおもしろい》


「あの子をわざわざ見に行ったの?」

《まさか。そんな趣味の悪いことはしないし》
《ただ我らは感じただけ――あの大蛇のつくりあげた世界に勝手に色が足されていくのを》
《その身のように真っ白な紙に、絵具で好き勝手染めあげていくような》
《白の龍神、我らが神よ。あなたが人間に協力するとは》
《そーいうのって、随分人間らしいことなんだぜ?》


「――うん、そうだね。だけどいいの。かつて"神子"と、皆と旅をして、人の想いを知ったんだ。力を生み、つかって未来を築いていく、そんな強い想いを。わたしたちには到底できないことだった。でも、あの人が教えてくれたから。痛いほどの想いが聞こえたから。ほんの少し叫んでいたあの子がきっと手に入れると思ったから。わたしは動いた。
弱い見かけに騙されたら痛い目を見るのはそっち。油断はいけないよ」


《あの神がそういうとはなー。人間ってやつに興味が湧いてきたよ》
《ならば我らも見定めるとしようか。人の想いの力って奴を》



「ありがとう!
じゃあまずはあの子を、ミオを守って。押し付けてしまったのに、一緒にいれない私のかわりに。せめて外からだけは、傷つかないように。そしていつか認めることができたら、あなたたちの好きにして

――白沢(はくたく)、犬神(いぬがみ)」


《――御意ーってな》
《――仰せのままに》



言葉と共にかき消えたふたつの影。
きっとふたりもわかるだろう、人間の不思議な力を。


(ねえ、神子。私は神に戻ったよ、あなたの龍ではもうないけれど、わたしはあなたを忘れない。だからきっとわたしは人間を、信じられるんだろうね)









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