突然糸が切れたように倒れたミオを太公望殿が受け止めた。それと同時に魔法みたいに踊る炎も、得体のしれない白い獣も掻き消えた。
慌てて尚香殿とふたり、覗きこんだがただすやすやと眠っているだけだった。……心配、したじゃないですか。


「力を使い果たしたのだろう」
「そうですね……民たちを帰さなければいけませんし、もう鬼もいないでしょう。我々も、撤退しますか」
「ああ。劉備将軍!撤退しよう」
「わかりました!……その、ミオは、大丈夫でしょうか」
「ああ、眠っているだけだ」


劉備殿にそう返して、太公望殿はそのままミオを抱きかかえる。……なんですか、なんでかイライラします。と、いうよりまさか…嫉妬?
あの子は目を離せない存在だ。かわいい妹弟子で、その素直なところは気に入っていた。でも誰かに惹かれるなんてこと自分にはないと思っていたのに。ほんのり苦笑してしまった。
兵たちに指示を出して、同じように指示を出していた太公望殿のもとに気になって戻り、尋ねる。


「太公望殿!…ミオは陣営まで太公望殿が連れて行かれますか?」
「ああ。馬で共に、と考えていた」
「そうですか…では、お願いします」
「ああ。……考えれば貴公とこのように話すのははじめてだな」
「そういえばそうですね。この子が来てからですよ。この戦場でより、ですからね」
「、そうか」
「ふふ、ミオのおかげですね」
「…それはきっとよいことなのだろうな。だが、我らは共に、約束を破ってしまったな」


戦のないところから来た、といった。
それが軍師として戦場に立ち、それでも危険のないはずだった。守ってやってほしい、と言われた。
結果としてこの子はそんなものを必要としなかった。けれど、危険な目にあわせたのは間違えなかった。
きっと、太公望殿はそれを苦々しく思っている。それは私も同じで。


「戦場に立たせたのは私であるというのに、それを早くも後悔している。…人の子とは、不思議なものだな」
「そうですか……でもきっとそれは、」
「?、それは、なんだ?」
「いいえなんでもありません。貴方がミオを始め、人のことを少しでも気にしてくださって嬉しいです」
「…………そうか」

私は笑顔でそう言ったけど、でも貴方のそれは、ほとんどはミオに限るんでしょうね。……なんてことは言ってあげません。きっと彼はまだわかっていない。だけど自覚されたら手ごわい強敵になってしまうでしょう?


(腹黒い、なんて言われたって。仕方ないじゃないですか)









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