いつも手から離さずに、もっていたスパナと銀食器。そういえば、どちらも大切な人からもらったんだっけ?



「ミオ、お前いまなにが欲しいんだ?」
「えーなんかくれるの?じゃあね、新しいスパナが欲しいの!できたら丈夫で軽い奴がいーなあ…」
「任せとけ。俺に不可能はねえぞ」
「さっすがリボちゃん!大好き!楽しみだよう!」




「ミオー、はい」
「へ?つーくん、なあに?」
「………誕生日、プレゼント。ちょっと早いけど、当日はオレももらう側になっちゃって渡せないだろうから」
「わあ……開けて、いーい?」
「どうぞ」
「…………あ…これ………」
「お前この前買い物行ったとき、なんでかずっとこれ気にしてただろ」
「でも!これ銀だよう、すっごいすっごい!高かったでしょ?!」
「うんまあ……(リボーンの怪しいアルバイトとかしないと買えなかったし)。でもいいの!オレは、ミオが喜んでくれたら、嬉しいんだから…」
「…う、うん…うん!大事に、大事にする!つーくんだいすき!」
「オレも、ミオがだいすき、だよ」
「え、へへ」
「…はは、」
「「へへっ!」」




「ほら出来たぞ、ミオ」
「うわーい!本当だ、かるーい!なにで出来てるのこれー」
「企業秘密だぞ」
「えー?まあいいもーん。自分で調べるから」
「……いいか、いつも持ってろ」
「?、なんかあるの、かな?」
「それも秘密だぞ。…まあいずれわかる」
「んー…ま、いっか。はーい」






杖の部分に間抜けな顔がくり抜かれたフォークたちは数多く分かれ、飛び回る。
いつの間にかスパナは熱い小さな指輪と変わり、その愛嬌のあるライオンの顔からはガウ、と声がした。炎を与えたら、それは白い小さなライオンとなり、ぼくの肩へとしがみつく。それに既視感を感じてすぐに思い出す。未来から帰ってきた兄と一緒にいつもいる、小さなライオン。……そっか、つーくんのナッツと、同じなんだ。君は。


「天空、ライオン……」


たてがみがないから女の子だとわかる。ナッツみたいに頭に飾りをつけて、たてがみのかわりに尻尾と四肢の先にもふもふと真白い飾り毛をつけている。もしかしてぼくと一緒でナッツの妹かな?なんて楽しくなった。ある意味、アルビノ。ぼくと一緒だねなんてぼんやり思った。
きっと銀食器も特別製。つーくんが買ったときはただの食器だったんだろうけど、多分リボちゃんとかウェルデちゃんあたりの仕業なんだろう。


「名前は……そうだなあ。」


ナッツの妹だから、アーモンド?でもなんかつまんない。くるくると舞う炎に、そういえばぼくってば晴れの炎に、この様子じゃあ若干だけど雲の属性もあったり?それかこの銀食器の能力か。
ともかく死ぬ気の炎は、いろんな色がカラフルに、描かれる。理想は雨の、青だったんだけど………そうだ!


「クレヨン、よりは……クーピー!きみはクーピーね、よろしくね」


笑いながらつげれば、ガウ、と一声返ってきた。いいみたい、よかったー。
…と、和んでる場合でもなかった。ぼくのまわりの奴らはもう燃やしてしまった。次は、劉備さまたちのところを助けないと。
くるりくるりと、フォークたちがぼくの意志通りに動く。知ってるよ、どうやって戦えばいいかなんて。思い出したんだ、ずうっと《むかし》もこんな風に、あの子たちと「遊んで」いたときがあったって。…………誰とかなんて、わからないけれど。


「……trick and treat」


10月はぼくたちの生まれた月。
悪戯がはびこる、死者が帰る日。
炎を灯せ、動きだせ!



そこからはあっという間だった。
鬼を焼き尽くして、突き刺して、劉備さまたちを守るように人形を踊らせて。
死んでいく、鬼たち。でもそれが当たり前のようにぼくは手を動かした。
ふと自分の髪を見れば、なぜか真っ白。白髪でもないし、変。でも、懐かしくて笑ってしまった。
















「新手、かあ…………。人間だ、どうしようりっくん」
「はい?一体どうしたんですいきなり」
「いやだって、さすがにぼくだって中学生で犯罪者にはなりたくないんだよう……」
「いまさらなにを言ってますか、あんなに鬼を燃やしておいて」
「いやあ、そーなんだけど。やっぱり、気分的に……かなあ」
「……………呆れるくらいに、普通、ですね」
「え?なあに?」
「いえひとりごとです。さて、集中してください」
「はーい。……で、あなたはだあれ?」


味方にいない顔だってのは、わかる。
そうだった、ぼくってば記憶力がいいどころか絶対忘れないんじゃん。RAMじゃなくて、ROM。あれ、逆だっけ?


「わしを知らぬか、娘。わしは奥州の王、伊達政宗よ」
「だて、まさむね………奥州筆頭、独眼竜伊達政宗……?」


……ちっちゃい。声にだしては言わないけど馬上でもぼくと同じかちょっと大きいぐらいだと、わかる。
Let's party!のゲームばっかりやってたから、なんか違和感。これが正しい歴史なんだけど、さ。



「それでその独眼竜さんは、何の用ですか?」
「りっくん」
「そやつは遠呂智に毒された人の子だ。下がれ、ミオ」
「ぼ、望ちゃん…」


いつの間にそこにいたの。
ぼくたち三人と向き合う、独眼竜。あーあ、ついに、今回も、人間を手に掛けるのかあ、なんてあきらめたところ、意外な言葉が彼から出た。


「……わしはもう争う気はない。」
「え?」
「民を傷つけるようなことになったのはこちらの責任よ。民がおらずして、なにが王か……鬼共はわかっておらるのじゃ。詫びを言おうぞ、娘」
「………はあ」
「今回はこれで退かせてもらう」
「我らがそれを許すとでも?」
「ふん、そんな暇があるならばあの民たちを休ませてやれ」
「……………」


へーえ、あの人ただのちっちゃい男の子じゃないんだねえ。
鬼の味方らしいからなにかと思ったけど、なにか理由があるのかもしれない。
と、本陣の外が騒がしくなってきた。



「玄徳様!」
「劉備殿、無事でおられるか!」
「ちぃ!騒がしくなってきたようだな……退くぞ!――娘、名を何という?」
「……ミオです」
「ミオか…覚えておこう」
「待て!!逃がしませんよ」
「ダメ、りっくん。…伏兵がいるみたい」
「妲己の仕業か……」


しょうちゃんたちと入れ違いにと、伊達政宗御一行は駆け抜けていった。…結局、何しにきたんだろうあの人たち。
まあ、伊達の、まーくんねえ………。さすがは後世に強く名を残す賢主ってとこなのかなー。


「ミオー!!?」
「しょうちゃん」
「え、あんたミオよね!?なにその髪の毛真っ白!なんか大変なことでもあったの?!しかもそれ獅子の子!?どっから連れてきたのよ、意味わかんないわ!ちょ、陸遜あんたがいながらなんていう!!説明しなさいよー!」
「ちょっ!尚香殿おちつい……」
「て、いられるもんですかー!!ミオが、あたしのかわいいミオが!太公望殿みたいになっちゃううう!」
「それは、どういうことだ…呉の姫よ……?」
「…あーうん、大丈夫。多分もとの色に戻っちゃうから。あとこの子は…………っ」
「え、ちょ、ミオ大丈夫……」
「……ごめんねしょうちゃん、後で、話すから、いまは、げんか………い……きちゃっ」
「っ、ミオ!」


ふわりと意識が飛ぶ。ああもう足に力が入らない。
最後にみたのは綺麗な顔を歪ませた銀色だった。


(あーあ、なさけない。むかしはもっと平気だったのにねえ?)










「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -