途中で会った陸遜も一緒に引きつれて本陣へと進む。どうせ妲己は私の足止めが目的だったのだ、ならば放っといても問題もない。問題は、本陣だ。劉備将軍もいて、ミオも…いる。


「っ申し訳ありません、太公望殿」
「いや仕方あるまい。あの状況では」
「まだ無事だといいのですが…」


今はもう火が消えているが本陣が燃えてからずっと、中は騒がしいままらしい。もしも、あれが妲己側の攻撃だとしたら、いや……止しておこう。
嫌な想像なんて、しないほうがいいのだから。


「邪魔だ、どけ!!」


陸遜とふたり、意を決して本陣へと入ろうとしたところに、響く怒声。あれは確か、伊達政宗という名の人の子。



「なにが、起こっている?」
「わかりません…しかし私たちもなかに入りましょう!」


陸遜に頷いて、我らも中に入る。そこに少女の死体がないことを祈りながら。
しかし、そこにあったのは。
呆けたように、足を止める伊達政宗。視線を辿れば、見知った、だけど違う少女の後ろ姿と倒れる鬼と消し炭。クルクルと踊る、得体のしれない炎達と、燃えて動く骨組みだけの人形のようなもの。

どうしてか、彩られて色づいていたはずの少女の髪が純白という言葉が似合うほどに鮮やかに真白にかわり、その肩に人形とは違い、明らかに生きていると思える小さな獣を連れている。あれが、ミオ、か?
気づいているのかいないのか、こちらを向かない少女の顔色もなにも見ることは出来なくて、それがまた私達を焦らせる。


ミオの向こう側には、人形に守られるようにして立つ、劉備将軍といくつかの傷ついた兵達、そして多くの民の姿が見え、少し安心する。
そうして見れば、まわりには戦う兵達もいてなんとか押し切っているのだと知れた。

だが、劉備将軍の瞳は驚愕に彩られ、真白の娘を見つめていたことがまた私と隣の人の子の視線をミオに集める。


「なにがどうなっているのでしょうか……あれは、ミオ……なのでしょうか」
「詳しくはわからぬ。しかしそれは確かだ。…とりあえず私たちも助けに入ろう」
「はい!陸伯言、参ります!」


伊達政宗らの集団を崩し、とりあえずは、と劉備将軍の元へと向かう。そのときにミオの方を向けば、目が合って……笑った気がした。

「劉備将軍!」
「おお、太公望殿!」
「無事なのか…?劉備将軍」
「このとおり、私も民もみな無事でございます」
「…聞いてよいか。あれは、ミオは…一体なにがあった」
「わからぬ…わからないのです。戦いが始まり、私も民を守ろうと必死で。いつの間にか………いや、違う」
「落ちつけ、ゆっくりでよい」
「あの、飛ぶ炎が現れ、多くの鬼達に突き刺さった瞬間、燃え上がり、炭となった。そのときにはもうミオがあのように立っていて、あとはいまのように我らが圧すように………」
「なるほど、感謝する劉備将軍」


やはりあれはミオの仕業、か。
わかっていたが、あらためて言われると信じられない。だって、そんな彼女は、知らないのだから。


陸遜が、鬼を斬り伏せミオ背後を守るように立つ。よく見れば、その手はくるくると指示を出すように動き、口はなにかを紡いでいるよう。
それに合わせてかいくつもの炎が鬼を囲み、焼き尽くす。いくつもの人形が動き鬼を狙い刺してゆく。


「っ、ミオ!加勢します!」
「――りっくん、だあ。そーだねえ、新手さんもきたし、そろそろ決着つけたいもんねえ」


パチンと指を鳴らしたら、残る鬼はすべて焼きあがった。



(あとに残るは、人間のみ)










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