あか、はなによりつよいいろ
なによりなんてことばじゃつまらない、つまりは、さいきょうの



「次は……ここだ。見える?あの山のしたあたりに伏兵が仕掛けられてる」
「それは厄介ですね……、ならばこちらからも仕掛けます。後続部隊に山を回らせて………逆に利用してしまいましょう」
「はい、陸遜様、ミオ様!」


思ったよりも敵が少ない。だけど地形をうまく利用しているから、やりにくい。これが戦上手というもの、か。きっとぼくだけじゃ経験の差で、もう負けてただろう戦。ぼくが示して、りっくんが策をだす。今回はいいコンビネーションだと思います。


「あはは…、ミオ様だって。はじめて言われたよう」
「まあ軍師は少なくとも一般の兵たちよりは上ですからね。これからたくさん呼ばれますよ」
「うわ……絶対、慣れなそう」


でもよかった。こうやって軽口を叩けるくらいなら、右足にかかる重りはどうやら使わなくてすみそうだ。


「ミオ、陸遜殿。ふたりのおかげで民をうまく逃がすことができた。ありがとう」
「いえ、みなさまのおかげです。あんなにうまく動いていただけるとは、びっくりしました」
「いいえ、ミオが罠を教えてくれなければここまで多く無事とはいかなかったでしょう。役にたってますよ」
「そうだな。そなたはそんなに謙遜することはない」
「あ、ありがとうございます……」


こんなふうに言われるの慣れてないから。変にむずがゆい、なあ。
はあ、とこの状況から逃げ出すためにも戦況がどうなったか確認してしまおうと、地図と報告に再び集中した、けれど……?


「……?なにか様子がおかしいですね」
「なにかが……、なにかきた?ふもとのほう、望ちゃんがいるあたり…、かな?」
「…ちょっとあそこをとられるとマズいですね…。私も行きます、ミオ頼みましたよ!」
「あ、ちょ…!」


あーあ、行っちゃった…。
そんな場合じゃないけれど、馬で駆けていく姿はかっこいい。ぼくも乗れるようになったほうがいいよねえ、なんて。


「あの、劉備さま、軍師さま…わたしたちは……」
「心配するな。我らが必ず送り届ける」
「ああ、本当にありがとうございます!」
「皆、民を必ず守るのだ!」

「はい、劉備様!」
「…………」


ここにいるのは、妊婦さんや怪我人、自力で脱出できないような人たち。絶対に傷つけるわけにはいかないよ、ね。だけど


「やな、よかん……」


ぞくんっ


「………く、る……?」
「―――ここが本陣かぁ、妲己さまのいうとおりだな」
「貴様が劉備か?」
「! くっ…なんということだ…こんなにも多くの」

「…伝令さん、みんなに伝えてください。劉備さまや民のみなさんを、はやく逃がすために」
「は、はい!」
「民のみなさん、下がっていてください」
「ミオ!」
「劉備さま、大丈夫、です……あなたが傷ついたら終わりなんです。だから、下がっていてください」


大丈夫なわけないけどね。初めての命の取り合い。手はガタガタと震えているし、はっきり言って怖い。だけど、絶対逃げちゃだめだ。右足から拳銃を取り出す、ああこんなことならリボちゃんに教えてもらうんだったな。ぼくには一生縁のないものとばかり思いこんでた。つーくんたちもそれが当たり前と、ぼくを遠ざけてたから。
本陣を守る武将たちが武器を構えるのと同じくして銃をかまえた。



「けけ、お前みたいなガキが、司令官か」
「っ、だから、なんだよう」
「ミオ様っ!」
「あ――来るな!!!」


ぼくを庇おうと飛び出した兵士へと、群がる鬼。目の前で飛び散る鮮血。倒れる人、笑う鬼。そしてそれが合図のように途端に広がる戦火。
すべてがスローモーションで見えて、すべてが記憶に残った。


「も、うしわけ…ありません……余、計なまねをし…たかもし、れません。怪、我はありま、せ…んか……?」
「だ、大丈夫!でもあなた!」
「陸遜さ、まから……あなたさまを、守るように、と………。だから、いい……んです……よ……………………」

怪我がないのなら、それでいいのだという。そんなわけないのに。目の前で冷たくなっていく。
まだ死んではいない、だけどこのままじゃあきっと動かなく、なる。


「くっ!」
「劉備さまをお守りしろ!!」


そうだ、守んなきゃ。
守らないといけないんだよう?
この人がぼくを守ろうとしたように、動かなきゃ。


「そんな弾当たんねえぜぇええ!!」


とっさに劉備さまへと、民のみなさんへと向かってくる鬼に銃を撃つけれど、まだ震える手じゃあその通り、当たらない。
そう、こんな力じゃだめなんだ。

力をください、ねえ。ぼくにもその血が流れてるというのなら。
そんな力、使えなきゃ、意味が、ないじゃない。



(………なあに言ってるの?
だってそんなの、とっくに知ってる、ことだよう…?)





「劉備様!あなたはお逃げくださいませ!」
「く、………皆のもの、すまない…!私は、民を見捨ててなぞ、できぬのだ!」









「にひひ。さあ、お手てをあわせて――いただきます」


そっか、知ってたよ、ね。











人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -