心配症のしょうちゃんと別れて、ぼくは望ちゃんとりっくんのあとについて出陣準備。こんなにきれいな人ふたりに囲まれていて、少し自分がいたたまれなくなってしまう。きらきらと光るふたりを前にしたら、きっと女の子たちは虜なんだろーなとかどこか緊張感がないことを考えながら、息をつく。いや、緊張、してるみたい。
……またあの戦場みたいなことになるのかなあ。みんなには見えない位置にある、足についた重みが嫌になる。
右足には鞄にしまいっぱなしで一生使うことはないんだと思ってた護身用。弾が6発はいった拳銃。
左足にはいつものスパナと、どーしてか銀食器たち。どうしても直感が訴えるの、連れて行けと。


だけど………意外と落ち着いている自分に驚きが隠せない。あのときはあんなに怖かったのに、そこに行くのに今は普通。
もうひとりじゃないからかな、それとも……

《遠いとおい「むかし」にとっては、これが当たり前だったから》


…………え?あれ、まただ。
なんだろうこの感覚、意味わかんない。


「ミオ、私たちは少し支度をしてくる」
「そこで待っていてくださいね。迷子になってはダメですよ」
「あ、うん……って子どもじゃないって言ってるのに!」


ああもう!
笑いながら去るふたりの後ろ姿に腹がたつ。軽くむくれて、でもよく知った気配が近づいてくるのに振り向く。


「ミオ、ちょっといいですか」
「いっちゃん?」
「一応父を紹介しておこうと思いまして。稲はここを守らないといけないので行くことができないからかわりに」
「そなたがミオか、稲が世話になっている。俺は本多平八郎忠勝、よろしく頼む」
「い、いえいえ。お世話になっているのはこちらのほうです。ミオと申します、今日の戦ではよろしくお願いいたします」
「いや、初陣だったな。気張らずに行け」
「は、はい…!」
「父上ったらもう…。ミオ、なにか身を守るものを持った?なにがあるかわからないんですから」
「いっちゃんも大概心配性だねえ。しょうちゃんと一緒。大丈夫、ちゃんと持ってるよう」
「おや、いつのまに」
「っ!? せ、せんせい!いきなり現れないでくださいよう…」
「ふふふ、これくらいは感じとれるようにならないとダメですよ。なんのための貴女の能力ですか?」
「う……」


い、言い返せない……!


「本多殿、私の教え子をよろしくお願いします」
「うむ、この本多平八、期待に応えよう」
「か、かっこいい……いっちゃんのお父さん、すごくかっこいいねえ」
「はい、自慢の父上ですから」


……いいなあ。それに比べてぼくのお父さんは……いやまあ、やるときは格好いいみたいだし、お母さんの選んだひとだからいいけどさあ。もーちょっと、ましな嘘をついてほしかったよう。…………あ、ふたり戻ってきた。


「待たせたな」
「先生、見送りですか」
「はい。太公望殿も陸遜殿も、……ミオも気をつけて」
「…心配には及ばぬだろう、さあ行くぞ」「あ、うん……いってきます!」


(嫌な予感、あたらないといいんだけど、なあ………)










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